2015年度 中南勢地区春季大会上演脚本 2016年3月26日(土)2校目上演(11時開演) 会場:津市白山総合センターしらさぎホール ナウワカユメ                          西村ももか・作                    三重高校演劇部・潤色 登場人物(4人)  カナト(少年)              ススム・男・酪農家の男              明日美・ナイトメア)  ピッピ・女・ススムの母(声)        ※ススムのセリフは一応関西弁?で書いたつもりですが、ご当地の言葉で構いません。 ♯1 プロローグ ダークオープン。 真ん中に高い場所がある舞台。 その上で女性がパソコンを打っている。 パソコンはタワータイプの結構大きなやつ。 台の下のTOPがつく。 音響はRPGゲームの音。 ヘッドフォンをした少年が、コントローラーを持って夢中でゲームをしている。 女性はパソコンの画面を眺めている。 男と女が両袖から出てくる。 男 私の夢。舞台演出家になって、みんなが驚くような舞台を作る。 女 私の夢。雑誌の読者モデルになって、将来は起業する。 男 私の夢。地方公務員になって、安定した暮らしを手に入れる。 女 私の夢。フライトアテンダントになって、世界中を飛び回る。 男 私の夢。有名なYOUTUBERになって、広告収入で生活する。 女 私の夢。この町の特産の牛乳を使って、世界一のチーズを作る。 明日美 (立ち上がって)私の夢…。(クチパクでいう。) 少年が倒れる。 少年のTOPがフェードアウト。 続いて、女性のTOPがフェードアウト。 ♯2 カナト、ピッピと出会う 照明がつくと、カナトが倒れている。 カナトゆっくり起き上がる。 カナトきょろきょろして、見慣れない世界に驚く。 あちこちを探索し始める。 後ろの台からピッピが顔を出す。 カナトが後ろを向くと、ピッピは隠れる。 カナトが台を通り過ぎた後に、ピッピが後ろからついていく。 カナト首をかしげて、振り向いたら、目の前にピッピがいる。 カナト わっ! カナト、四つん這いで、逃げようとする。 ピッピが服をつかんで引き戻す。 カナト 離せよ、離せってば。 ピッピとカナトがぽかんとお互いを見つめあう。 ピッピ、いきなりにやっと笑い、ドラゴンが襲い掛かるような動作で「 がおっと脅す。 カナトがまた四つん這いになって逃げようとする。 ピッピが服をつかんでまた引き戻す。 カナト ごめんなさい。ごめんなさい。本当に申し訳ございません。 カナト、ピッピに向かって土下座する。 ピッピ満足そう。 ピロピロ音。 ピッピ無表情になり、ストップ。 カナト、様子が違うことに気づいて、ピッピの目の前に手を振るなどする。 ピッピ再び、表情を取り戻す。 1回転し、少しカナトから下がって。 ピッピ ようこそナウワカユメへ。勇者カナト様! カナト …はい? ピッピ 先ほどは大変失礼いたしました。わたくし、勇者様の案内人をお勤めします、ピッピ・トゥモロー・シャインでございます。今後はどうぞピッピとお呼びくださいませ。 カナト …ピッピ…、ピッピ・トゥモロー・シャイン。…ナウワカユメの? ピッピ そのピッピでございます。 カナト え、ちょっと待ってくれよ。あなたは、本当にあのナウワカユメのピッピさんですか? ピッピ はい、その通りでございます。 カナト 本当に? ピッピ はい。 カナト 本当?本当に? ピッピ …では、失礼いたします。 いきなりカナトの頬を引っ張ってねじる。 カナト いててて。何するんだよ! ピッピ お分かりになられましたか? カナト …じゃあ、本当に…ここは、あのゲームの世界… ピッピ ゲームの世界?なにを言ってるんですか? (観客に向かって)ここはNOW YOUNG DREAM WORLD、ナウワカユメの世界です! カナト … ピッピ そしてあなたこそが、この世界を救える伝説の勇者カナト様でございます。 カナト …僕が、勇者…あのナウワカユメの勇者…。(少し喜ぶ) ピッピ (そっぽ向いて)まさか、あなたが勇者だとは思いもよりませんでしたけどね。 カナト ってことは…どういうこと? ピッピ (ちょっとガクッと来て)カナト様…あなたはナウワカユメの世界をご存じでしょ? カナト そりゃ、やってたから分かるけど。 ピッピ 分かるんなら話は早いじゃないですか?仲間とアイテムを集めて、ボスを倒して「大切なもの」を取り戻すんですよ! カナト やっぱり、ゲームじゃないかよ。 ピッピ ゲームじゃありません!ここは、ナウワカユメの世界です! カナト …(まだ納得できない) ピッピ だから、ナウワカユメの世界です カナト …(まだ納得できない) ピッピ それでは、失礼します。 ピッピ、カナトの頬を引っ張りねじる。 カナト 痛い痛い!! ピッピ 分かりましたか? カナト … ピッピ だから…(もういちどつねろうとする) カナト わかりました!分かりました! ピッピ それでは、今から冒険に出発してもらいます! カナト 冒険? ピッピ そうです。ボスから大切なものを取り戻すんです。 カナト …でも、こういうのって仲間がいるんじゃないの? ピッピ 仲間? カナト そう。僕一人じゃ不安だし、いっしょに戦ってくれる仲間が。 ピッピ そうですね。それなら… ピッピ、下を向いてしばらく動かない。 ピロピロ音。(さがしている?) カナト ピッピ? ♯3 ススム召喚される ピッピ、いきなり顔をあげてにこにこしながら上手のほうに歩いていく。 ピッピ、ロープを待ってセンターまで歩く。 おもむろ(じらして)にそれを引っ張る。 ススム、豪快に引っ張られながら登場。 ススム うわぁぁぁ! カナト (ピッピの方を見て)…ピッピ!? ピッピ、カナトに仲間を連れてきたと目で訴える。 カナト、指をさして、この人?という顔をする。 ピッピ、大きくうなずいて、手でどうぞ。 カナト、恐る恐る、ススムに近づく。 カナト (ススムの近くまで行って)大丈夫ですか… ススム、魚みたいにたまにぴくぴくする。 カナト ピッピ! ピッピ、カバンの中から、鼻眼鏡をとりだし、観客に見せる。 ピッピススムに鼻眼鏡をかける。 ススム、目が覚める。 ススム、周りをきょろきょろ。 ピッピ、おもむろに近づいて、鏡をカバンから出して、ススムの前に差し出す。 ススム わ! ススム、あわてて鼻眼鏡をとる。 ススム おまえらだれや! ピッピ ようやくお気づきになられましたね。 ススム え? ピッピ わたくし、ナウワカユメの案内人、ピッピと申します。 ススム ピッピ? ピッピ はい、ピッピ!ピッピ・トゥモロー・シャインです。 ススム ピッピ・トゥモロー・シャイン?もしかして…あの…ナウワカユメのか? ピッピ 勇者様とおなじことをお聞きになるのですね! ススム 勇者?誰やそいつ。 ピッピ はい、あそこでビビっていらっしゃるお方です。あなたは、あの勇者カナト様を助けるパートナーとして選ばれたのです。 ススム パートナー? ピッピ はい。 ススム え、ちょー待ってくれ。ここ、本当にナウワカユメの世界か? ピッピ はい、その通りでございます。 ススム、カナトのほうに小走りで行って。 ススム 本当に、こいつ、ナウワカユメのピッピか? カナト はい…多分。 ススム 本当に?じゃあ俺ら、ゲームの世界にはいりこんでもうたんか?! ピッピ ゲームじゃありません!ここはナウワカユメの世界です! ススム いやいやいや… ピッピ …では、失礼いたします。 ピッピ、ススムの頬をつねる ススム いだだだだ! ピッピ おわかりになられましたか? ススム いきなり何すんねん! ピッピ あなたは、勇者カナト様をサポートし、二人で協力して「大切なもの」を取り戻してもらいます。 ススム いきなりそんなこと言われても、そんなん信じられるか!はよ元の世界にもどせ! ピッピ 元の世界?それは何ですか? ススム 決まっとるやないか、俺が住んどった世界や? ピッピ 住んどった世界?よく分かりません。私はただの案内人ですから。 ススム じゃあ、おれら、本当に「大切なもの」を取り戻さないと元の世界に戻れんのか? ピッピ (説得をあきらめて)まあ、そのとおりでございます。 ススム まじかよ… ピッピ ようやくお分かりになったようですね。 ススム …わあった、わあった。やってやるよ。やればいいんだろ。…おい…たしかカナトやったな! カナト ・・・はい… ピッピ、喜んで台の裏に行って武器の準備をする。 ススム いまの話、聞いとったよな! カナト は、はい! ススム お前が勇者なんやから、お前が「大切なもの」を取り戻さな、俺らは元の世界に戻れへんのや。 カナト はい…。 ススム 分かったら、さっさと来い。ピッピから武器受け取れ! ピッピ、嬉しそうに、カナトとススムに武器と鎧(無理ならマント)を渡す。 カナト、ためらう。 ススム もたもたすんな! カナト でも… ススム なんだよ。 カナト この世界って、本当に痛いんですよ。 ススム 痛い? カナト ピッピにほっぺたつねられたとき痛かったでしょ? ススム そういやあ… カナト だから、闘うって言ったって、本当に死ぬかもしれませんよ。 ピッピ 安心してください。死にませんよ。 ススム どういうことや? ピッピ ナウワカユメの世界では、戦いに負けても死ぬことはありません。でも、痛みは感じます。 カナト・ススム … ピッピ ですので、できるだけダメージを受けないように闘ってくださいね? カナト … ススム (やけくそ?)おもしれーやん。ホンマにナウワカユメの世界やんか。よし、やったるぞ、いくぞカナト! カナト、いきなり固まる。 ススムがカナトをみて変化に気づく。 ススム おい、カナト。どうしたんや。おい! ススム、ピッピと目配せする。 ピッピ、了解のサイン。 ピッピ、カナトの腕を引っ張り、ススムに向かって投げる。ウエスタンラリア ット! カナト 危ない! ススム 気い付いたか?おい、いくぞ! カナト ちょっとやりすぎですよ。 ススム うるせえ。これからモンスターやらトロールやら、どんどん出てくるんや。それをみーんなやっつけへんと、ボスの城に行けへんのやで。 カナト ・・・ ススム 分かったら、準備せえや。 カナト ・・・(突然切れて)いやだ!いやだいやだいやだーーーーー!(下手にはけて逃げる) ススム おい!カナト! ピッピ カナト様! ススム、逃げるカナトを追いかけて去る。 ピッピ、武器と鎧を持って下手袖にはける。 音楽 ピッピ出てくる。 ピッピ 痛いのがいやと逃げ出したカナト様。それを説得するのに私とススム様がどれだけ苦労したか…でもススム様の強ーーい説得により、ようやく、カナト様も現実を受け入れ、納得していただくことができました。 二人が出発するときに、私はこれをカナト様にお渡ししました。(ペンダントを見せる)これから先、厳しい旅になったとき、これがきっと役立つことでしょう。さて、これからどうなることやら。 ピッピ、はける。 ♯4 カナトとススム 砂嵐の音。 カナト、ススム、砂漠を渡る。 顔に砂が当たって、歩きにくそう。 カナト、痛がって、歩けない。 顔を覆ったススム、痛がるカナトを引っ張っていく。 場面変わる。 カラスの声。 夕暮れの森の中。 ススム、カナトの順にやってくる。 カナト、ばてている。 その様子をススムが見て。 ススム …暗くなってきたし、ここで野宿しようか? カナト (安堵して)…ふう! ススム でも休むのはまだ早いぞ。たき火するから薪を集めてこい。 カナト ええっ、少し休ませてくださいよ。 ススム まったくほんまにへたれやなあ。 カナト 運動するの久しぶりなんですよ。 ススム 言い訳なんてせんと、さっさと仕事! ススム、カナトを押す。 カナト、だるそうに薪を集め始める。 ススムも薪を拾う。 集めて戻ってくる。 カナト ススム、さんでよろしいですか? ススム なんだ? カナト これ、ゲームの中ですよね。 ススム まあ、そうだな。 カナト 本当に火がつくんですかね。 ススム そんなもん、やってみなわからへんやろ。 ススム、薪を重ねる。 その上から落ち葉をくべて、ライターで火をつける。 口で酸素を入れる動作。(マイム) 赤い炎が燃え上がり、二人の顔を照らす。 カナト ほんとに火がついた… 火に手をかざす二人。 カナト でも、さっきの砂嵐も本当に顔中痛かったし、ナウワカユメってリアルすぎませんか? ススム まあ、そうやな。 カナト 本当に、僕たち、この世界から抜け出して、元の世界に帰れるんでしょうかね。 ススム 考えても仕方ねえだろ。とにかくボスを倒してみねえと。 間 ススム そういや、ピッピからこれもらったわ。 ススム、かばんからパンとチーズを取り出す。 カナト パン? ススム とチーズだな。 カナト おいしいのかな…? ススム 味なかったりして・・・ カナト ・・・ カナト、ススム、恐る恐るパンを食べてみる。) 二人、固まる。 ススム …。 カナト …。 ススム …う、うめえな。 カナト うん、めちゃめちゃうまい。 二人、がつがつとパンとチーズを食べる。 ススム 見たところ、普通のパンとチーズなんだけどなあ。 カナト それにこれゲームですよね。 ススム …まあ、うまいからいいか。 二人、パンを食べきる。 ススム お前、現実世界でナウワカユメやってたんやろ? カナト はい。 ススム ランクいくつ? カナト Sです。 ススム S?まじで。 カナト 一応。 ススム すげえな、俺まだBやぞ。 カナト そうですか? ススム やり始めて何日くらい? カナト 3日くらいですかねえ。 ススム 3日でSかよ。おめえ、高校生?学校行ってんの? カナト いや、それは… ススム オレは、元の世界では、入院しとって。 カナト 病気で。 ススム いや、ケガで。それでネットでナウワカユメ見つけて、やり始めたんや。 カナト へえ。 ススム やりだすと結構はまるやろこれ。なかなかランク上がらへんし。おめえ、Sランクやなんてさすが勇者なだけあるなあ。 カナト ま、それほどでも。 ススム この世界でも結構活躍してくれそうやな。 カナト それは… ススム まあ、ゲームの中とこの世界とは勝手が違うしな。まあ、俺がお前を助ける立場みたいだし、雑魚は俺に任せとけよ。 カナト はあ…。ところで、ススムさんは現実世界ではどんな仕事していたん… カナト話を続けようとしたとき、ススムの表情が変わり、口に指をあてる。 カナト いったい? ススム なんか、聞こえねえか? カナト …いや、何も。 風の音。 ススムが刀に手をやる。 ススム 来るぞ。 ♯5 ススム、悪夢と戦う。 観客席から悪夢登場 悪夢 誰かと思えば、勇者ご一行かい。ようこそ、悪夢の森へ。 カナト 悪夢の森?! ススム どこだ? 悪夢、舞台に上がる。 悪夢 わたしは、悪夢、ナイトメア。この森を支配するもの。この森に入った以上、早速だけど、(剣を出す)お前たちはここで消えてもらう。 ススム 上等やねえか。(剣を抜く) 悪夢 まずはお前からか? ススム おっし、久しぶりに血が騒ぐぜ。 盛り上がる音楽。 ススム、悪夢、殺陣をする。 カナト、剣を構えようとするが、怖くて逃げ回る。 ススムと悪魔の戦いは互角。 勝負が簡単につかないと分かった悪魔は間合いを取る。 悪夢 …なかなかやるな。 ススム お前みたいな雑魚に構っとる暇ねえんや。 ススムが切りかかるが、悪夢がよけて、高いところに上る。 ススム 逃げんのか? 悪魔 ふん、頭を使うんだよ。 悪夢、ポケット(?)の中から、ドミノマスクを出す。 悪夢、それを目元にあてて、二人を見回す。 ススム おめえ、いったい何してんだよ。 悪夢 ふふふ、お前の弱点・・・見抜いた。(マスクを取る) ススム はぁ!?何言ってんだよ。 悪夢、指をぱちんと鳴らす。 音楽。西野カナ※1「トリセツ」 悪夢、女子高生になって、高い台から下りてくる。 そしておもむろにポケットから何かを取り出し、ススムに差し出す。 ススム ん?・・・な、何だよ。 悪夢 ・・・ス・・・ススムさん! ススム は、はいっ! 悪夢 これ、受け取ってください。 ススム お、俺に?! 悪夢 は・・・はい・・・私の気持ちです。 悪夢、ススムに箱を差し出す。 ススム、少し照れながら、箱をもらう。 悪夢、箱を渡したら、「きゃ」とか、照れながらススムから離れる。 ススム、箱を開ける。 箱が入っている。 ススム、もう一度、箱を開ける。 また、箱が入ってる。 ススム、もう一度あける。 またまた、箱が入っている。 ススム、もう一度あける。 すると、なにか黒いものが入っている。(音楽ストップ) ススム ・・・ん?なんやこれ?こ・・・これは・・・ 入っていたものは… ススム、箱を落として固まる。 女子高生は悪夢に戻った。 カナト …す、ススムさん? 悪夢 覚悟! ススム、悪夢に倒される。 足で踏まれる。ぴくぴく。 ガクっと息絶える。 悪夢 たわいない。 カナト ススムさん! ♯6 カナトvs悪夢 カナト、ススムの近くに行き落ちているものを拾って、持ってみる。 カナト ・・・ゴキブリ?(手を放す) 悪夢 それが、そいつの弱点さ! カナト そんな・・・。 悪夢 さてと、次は、お前の番だな、勇者さん。 カナト ・・・ カナト、ゆっくり立ち上がって構える。 足が震えている。それを止めようと足をたたいたりしている。 悪夢 ふん、そんなんで俺に勝てると思ってるのか? カナト ・・・ 悪夢 どこから切り刻んでやろうかな。 カナト (下手を指さして)あっ、DAIGOと北川景子が腕を組んで歩いてる。※2 悪夢 え、どこどこ?(悪夢、一瞬女子高生に戻る) カナト あっち! 悪夢、「DAIGO様」とか言いながら、下手に走っていく。 カナト ふ、危ないところだった。けど、すぐ戻ってくるよな。 (ペンダントを握りしめる)そうか、こういう時こそこれか? カナトペンダントをじっと見る カナト 何か書いてあるぞ。「自分の強みを知れ」… 足音がして、悪夢が戻ってくる。 カナト、台の影に隠れる。 悪夢 よくもだましたな。ギッタギタに切り刻んでやる。 悪夢、剣を持ちながら探し回る。 カナト、隠れきれないことを悟り、姿を現す。 悪夢 そんなとこに隠れていたか。 カナト やい、ナイトメア。勝負だ。 悪夢 何?臆病者のお前がか。 カナト ただし、クイズで勝負だ! 悪夢 はぁ?! カナト だから、クイズで勝負だ! 悪夢 何言ってんだお前。 カナト ふーん、クイズだと僕に勝てる自信がないんだな。 悪夢 何だと、貴様! カナト この勝負、受けてくれるよな? 悪夢 お前なんかに負けるわけねえだろ。 カナト よし、勝負だ。 カナト、小さくガッツポーズをする。 悪夢 でも、誰が問題出すんだよ! カナト そこにいるだろ。(ススムを示す) 悪夢 何? カナト ・・・この人を生き返らせてよ。 悪夢 えぇ!? カナト ナウワカユメの世界じゃ、死ぬことはない、そう聞いたぞ。まあナイトメアならこんなの朝飯前だろ。 悪夢 うーん、まあいいか!・・・ ♯7 クイズ合戦 悪夢、鼻眼鏡を出す。 鼻眼鏡をススムにかけて、ポースを決めると、ススムがよみがえってクイズの司会者になった。 音楽 ススム さぁ!はじまりました!カナトVS.ナイトメア!司会は私、SUSUMU、失礼いたしました。S・S・Mがお送りします! カナト ススム! SSM いえ、SSMです! カナト たいして変わらないと思うんだけど・・・ SSM それでは、クイズ大会の準備をしましょう! 黒子(ピッピ)がベルを持ってくる。 参加者(悪夢とカナトに手伝わせてセッティング) SSM さ、それではナウワカユメクイズin 悪夢の森。始めさせていただきます。 拍手。 アニメ関係の雑学問題。 悪夢、正解。 カナト そうなんだ・・・って納得してる場合じゃないな! 悪夢 ふん、ファンなら当然だぜ。(など) SSM ナイトメアが一点リーード!それでは、どんどんいきましょう!第二問! アニメ関係の引っ掛け問題。 カナト不正解。 悪夢、正解。 SSM おっと、またナイトメアさんが正解です。これで2点リード。カナト氏追い込 まれました。 カナト悔しがる。 悪夢 この勝負、決まったな。。 SSM それでは最後の問題第三問!なおこの問題に正解したらプラス3ポイントが与えられます。 悪夢 何、ずるくねえか! ススム ずるくありませーん!(など) ゲーム関係の問題 めっちゃ早くベルを鳴らすカナト。 カナト正解。 SSM カナト大正解。3ポイント獲得で、大逆転。この勝負・カナトの勝ちーーー! 興奮しすぎて、ススムいきなり倒れる。 カナト S,S・・・ススム!!(ススムを起こそうとする) 悪夢 そ・・・そんな・・・ 悪夢、崩れ落ちる。 悪夢 俺が負け・・・・? 悪夢、武器を持つ。 悪夢 こんなの認められるわけねえだろ。 悪夢、剣を持ってカナトを倒そうとする。 カナト、剣で防ぐ。 悪夢 臆病者のくせに! カナト、押される。 ススム、起き上がって、刀を取り、悪夢を刺す。 悪夢、倒れる。 カナト ススム! ススム 大丈夫か? カナト あぁー・・・えっと・・・その・・・ ススム おめえ、すげえやんか。 カナト 夢中でやっただけだよ。 悪夢、ゆっくり立ち上がる。 カナト、ススム、構える。 カナトとススムを両方にらんでから、あわてて下手にはけていく。 ススム 待て!(ススム追いかけて、下手にはける。) ススム、戻ってくると、手に黒い箱を持っている。 カナト 何それ? ススム いや・・あいつが落としてったわ・・・ カナト それ、ひょっとしてアイテムなんじゃないの?(ススムがカナトに箱を渡す) カナト、箱を調べて、開けてみようとする。 ススム まて、カナト。それまだ開けへんどこ。 カナト どうして? ススム こういうもんは、もしものときに使うんや。 カナト そっか・・・そうだね! ススム しまっとけ。 カナト、箱をポケットにしまう。 ♯8 カナト、ススムと語り合う たき火はすっかり消えている。 ススム、もう一度たき火に火をつける。 息を吹きかけると、火が燃え上がり、カナトとススムが向き合って座る。 カナト さっきはありがとうススムさん。僕を助けてくれて。 ススム 当たり前やろ。おれはおまえの相棒やからな。 カナト うん。でも、ありがと。 間 カナト ねぇ、ススム…さん。 ススム なんや? カナト ナイトメアと戦うまえに、聞いてた事・・ ススム なんやったっけ? カナト 仕事。どんなことしてたの? ススム 大工やよ。 カナト 大工。 ススム そう。建築現場行って、家建ててたんや。 カナト それで怪我したの? ススム そう。その日は屋根に上って作業しとったんやけど、風が強てな。気い付けとったんやけど、下に落ちて、足を複雑骨折。 カナト 痛かった? ススム 痛えに決まっとるやろ! カナト ごめんなさい。 ススム でも、以前バイクで事故ったときよりは、ずっとましやったわ。あんときは、肋骨折れて肺に刺さって、ほんまに死ぬかと思うたわ。 カナト バイク事故? ススム 若いころは、無茶ばーっか、しとったからな。 カナト 今でも十分若いじゃないですか。 ススム まあそうやな。 カナト いくつなんですか。 ススム 21。 カナト 僕より5つ年上ですね。 ススム じゃあ、お前は16か。なんでナウワカユメにはまったんや? カナト … ススム まあ、言いたくなけきゃ言わんでもええけどな。 間 カナト …僕、学校行ってなくて、学校休んでゲームの世界にのめりこんでたんです。 ススム そっか。 カナト ある日、夜中までゲームしてて、朝体がだるくって起きれなくって、学校さぼっちゃって。そしたら翌日もなんか、学校行きにくくってまた休んじゃって。学校行かなきゃ、と思ってたんだけど。 ススム ふうん。 カナト それで1週間後学校行ったときに、なんとなく、自分のいる場所がないって感じて、それからずっと。 ススム ようあることやな。 カナト 自分はその高校、入りたくて入ったわけじゃなかったし、なんでその学校に行ってるんだろうって思っちゃって。それで、1日中ゲームやって、持ってたゲーム一通りやっちゃって、ネットで探してたらこのゲームを見つけて。 ススム そうか。で、お前は今自分がいるこの世界のこと、どう思っとんの? カナト えっ? ススム お前、この世界にずっといたいと思っとんのか? カナト …わからない。 ススム …そうか。 フクロウが鳴く。 間。 カナト ススムさん。 ススム なんや。 カナト どうして僕が勇者なんでしょうね。 ススム どういうことや? カナト 現実の世界でちゃんと仕事して、一生懸命働いているススムさんが勇者なんじゃ ないですかね。 ススム 俺がか?俺はそんな立派なもんちゃうよ。 カナト なんでこの世界では僕が勇者で、ススムさんがそれを助ける役目なんでしょう。 ススム それがこの世界の現実なんやろ。 カナト ? ススム 現実なんやから、受け入れるしかしかたねえやろ。 カナト …そうですよね。 ススム 現実は受け入れるしかない…それが、俺が21年間生きてきて、お前に言える ことや。だからもうそんな話すんな。明日はボスの城だ。もう寝るぞ。 カナト …ススムさんは怖くないですか? ススム 怖い? カナト そうですよ。こんな森でたった二人でいて。僕、もしススムさんがいなくなったらと思うと… ススム、カナトの頭をポンと叩く。 ススム お前見てると、弟思い出すんだよ。 カナト え? ススム 俺はどこにも行かねえ。だから心配するな。 カナト …はい。 フクロウ鳴く。 暗転。 ♯9 ボスとの戦い おどろおどろしい音楽。 きしむドアを開けて、ろうそくを持ったススムとカナトが古い城に入ってくる。 カナト、ススムの後ろに隠れながら進んでいく。 ゆっくりススム二人。 カナト この部屋もボスはいなさそうだね。 ススム まだわかんねえから気い抜くなよ。 カナト うん。 ススム カナト。 カナト 何? ススム あれが出たら、お前よろしくな。 カナト あれってもしかしてゴ… ススム わっ、言うな。 カナト はい。 ススム ぜってえいうな。あの言葉。 カナト G…Gですよね。 ススム そうだG。それでいい、その先はぜってえいうなよ。 カナト はい。 ススム (部屋を探しながら)ここにはどうもおらんみたいやな。 ほっとした空気が流れる。 カナト ススムさん。ススムさんはどうしてGが苦手なんですか。 ススム 昔エアコンの下で寝ころびながらテレビ見とったんや。それでリモコンでエアコンのスイッチ入れたとたんGが落ちてきて、で、口の中に。 カナト ええ。それは確かにきますね。 ススム 来るだろ。 カナト はい。 ススム じゃあ、次の部屋いくか。 二人が行きかけると、部屋の奥の高いところの人影にカナト気づく。 カナト わあああ。 ススム なんだ。(カナトの声に驚く) カナト でっかいゴ…Gが。 ススム えっ! ススムが人影を見る。 人影が、こちらに向かってくる。 ススム、身構える。 ススム お前がボスか。 ボス … ススム どうやらそうらしいな。勝負や。 二人、すばやく構える。 ボスはまずカナトに向かって切りかかり、カナト逃げ回り、ススムの後ろに隠れてしまう。 ススム、カナトを守りながら、ボスと殺陣をする。 カナト、なかなか戦いに入れない。 ついにススム、ボスに足を切られて、うずくまる。 ボス、カナトに向かっていく。 カナト、勇気を出して立ち向かうが、剣を吹き飛ばされてしまう。 カナト、逃げ回り、台の上に上る。 ボスが向かってくる。 ススム カナト!ナイトメアからもらった箱を開けろ。! カナト、ススムの声を聞いて、箱を取り出し、開ける。 雷鳴と稲光。 ストップモーション。 真っ暗の中、全ての音が静かになる。 ♯10 劇中劇、ススムの過去 女の人の声で、囁くように呼びかけ。 声(女) …ススム…ススム… ススムとカナトに静かにスポット。 ススムがゆっくりと起き上がる。 カナトはそれを台の上から見ている。 ススム 母さん?母さん! 声 ススム。ごめんね。母さん今晩出発せえなあかんの。ごめんね。 ススム … 声 ちゃんとご飯食べるんやよ。お父さんと何とかうまくやっていくんやよ。 ススム そんな…母さん。 声 ススムはええ子やから。お母さん、信じとるからね。 ススム ワタルは?ワタルは、母さん。 母さん ワタルは母さんが連れて行く…。どんなことがあっても育てるからね。向こうで 落ち着いたら、手紙書くからね。 ススム 母さん、行かないで。母さん。 母さん ススム… 舞台全体が、少し明るくなる。 カナトが高い台から下りてきて、ススムの横に立つ。 カナト ススムさん… ススム立ち上がる。カナトに語りかけるように。 ススム それから俺は親父と二人で暮らすようになった。でも親父は飲んだくれて、な かなか家に帰ってこーへんかった。家にいてもさみしかった俺は夜の街に出て、同じような仲間と付き合うようになった。そして学校行っても、周りから敬遠さ れるようになっていった。 カナト そうだったんですか。 ススム ある日、俺は友達からバイク借りて、無免許で町を走った。そしたらパ トカーに見つかって追いかけられた。俺は逃げた。逃げて逃げて、赤信号の交差点に突っ込んだ。そしたら左から来た車にぶつかった。俺はバイクごと吹っ飛ばされた… 奇跡的に命は助かったけど、肋骨が折れて肺に刺さる重傷やった。 カナト … ススム カナト。病院のベッドで、俺何考えてたか分かるか? カナト …分かりません。 ススム もう終わりや、って思っとったんや。学校はもちろん退学やし、たとえけがが 治っても、壊れたバイク代、ぶつかった車の修理代、自分の入院代、けがをした人への謝罪、家庭裁判所…16歳の自分には重すぎる ・・・ カナト そうですか… ススム でも、そんな俺を励ましてくれる人がおったんや。看護師さんや病院の人たち や。16歳のどうしようもない阿呆なガキにな。その人たち本当に真剣に に俺のことを心配して支えになってくれた…。そしてこういうことを教えてくれた。「取り返せえへん失敗なんかない」ってな。 カナト … ススム お前は学校行けへんくて毎日ゲームの世界にのめりこんどるみたいやけど、何か やりたいことを見つけて、必死になってやれば、いろんな夢がかなうんちゃうかな。まだ16やろ。あんときの俺と同じやないか! カナト でも、僕、夢がないんです。 ススム そんなん、これから見つければええやろ? カナト じゃ、教えてください。ススムさんの夢ってなんですか? ススム 俺か。俺の夢は、自分の好きな人と一緒になって、あったかい家庭を作ること や。 カナト … ススム お前、人好きになったことあるか? カナト …いえ、まだ… ススム 好きになってみたら分かる。自分の好きな人と一緒に暮らす。子どもも一緒 にな。それ以上、何もいらへん。それが俺の夢や。 カナト ススムさん… ススム、カナトに剣を取らせる。 ススム さ、勇者さん。お前の出番だぜ。 カナト、力強く剣を取る。 ♯11 カナトとススム、ボスに勝つ 照明が元に戻る。 カナト、ススム、ボスに立ち向かって行く。 殺陣。 激しい戦いだ。 カナトも勇気を出して戦っている。 ススムがひきつけている間にカナト、ボスを倒す。 ボス、倒れる。 ♯12 明日美との出会い カナト、ススム、喜ぶ。 ボス、ゆっくり起き上がる。 カナト、ススム、再び身構える。 ボスはゆっくりと顔の覆いを外した。 そこからは女性の姿が。明日美である。 明日美 ・・・大切なものは見つかった? ススム お前は?お前がこのナウワカユメの仕掛け人か? カナト あなたが、「大切なもの」をくれるんですよね? 明日美 それは、ゲームの中の話でしょ。 ススム すっとぼけんじゃねえ。 カナト ここは、ゲームの世界でしょ? 明日美 そうね。でも少し違うかな。 ススム ふざけんな。さっさと「大切なもの」を渡せ。 明日美 だから、それは、ゲームの中の話。本当に大切なもの。あなた達はもう手に入れてるじゃない。 カナト 大切な・・・もの・・・ ススム つべこべ言うな。俺たちは元の世界に戻るために、戦ってきたんや。さっさと 俺らを元の世界に戻せ。 明日美 あなたが戻るのは、どんな世界? ススム は? 明日美 パソコンの前でゲームをする世界?それともたくさんの人々が暮らしている世 界? ススム そんなのどうでもいい。早く俺たちを・・・ 明日美 (さえぎって)どうでもよくない! カナト、ススム、明日美の語気にびっくりする。 明日美 ・・・この世界、ナウワカユメは、私が作り出した世界。 カナト やはりあなたが、この世界を・・・ ススム どうしてこんな世界つくったんだよ。 明日美 私は、今までたくさんのゲームを作ってきた。でも、あるとき、ふと思ったの。 私が作ったゲームは、人として大切なことを失わせてたんじゃないかって。 カナト・ススム ・・・。 明日美 だからわたしはこの世界を作った。大切なものを取り戻してもらうために。 間。 明日美 「大切なもの」が何か、わかったでしょ? 舞台の奥高い場所から光が差し込む。 明日美 (高い場所を指差しながら)出口はあっちよ。 ススム、武器を床に置く。 ススム ・・・久々に暴れて楽しかったわ。(明日美に)ええっとお前… 明日美 明日美。 ススム 明日美とやら。ありがとうな。久しぶりに楽しかったぜ。 あと、このゲームきっと誰かの役に立つよ。・・・元気でな。 明日美、黙って聞いている。 ススム カナト。 カナト ・・・ ススム 元気でな。 カナト 行かないで! ススム (笑って)言うたやろ。俺を待っとる人がおるって。 カナト …うん。 ススム お前はもう大丈夫や。だから泣くな。 カナト また会える? ススム ああ。生きとればきっと、な。 カナト ススム・・・ ススム、振り切るように去る。 間 カナト、マントを脱ぎ、剣を置く。 明日美を見る。 明日美がうなずく。 カナト 明日美さん。 明日美 何? カナト 明日美さんはどうしてこのゲームを作ったの? 明日美 あんたみたいな人のためかなあ。 カナト (少し笑って)ありがとう。 明日美 どういたしまして。 カナト 受け取ったよ。「大切なもの」。(少し弱気になって)でも現実世界に戻ったら忘 れてしまわないかな? 明日美 (少しガクッと来て)本当にあなたは「ヘタレ」ねえ。 カナト 自信なくて。 明日美、自身のペンダントを取って、カナトに渡す。 明日美 不安になったら、それ使って。 カナト でも… 明日美 みんなそうやってきたのよ。 カナト えっ? 明日美 だから、あんたはこれをもっと若い人に返して行けばいいのよ。 カナト ・・・(力強く)はい。 カナトそれを受け取り、嬉しそうに出口に立つ。 カナト 明日美さん。ありがとう。 明日美、手を振る。 カナトはける。 暗転。 ♯13 エピローグ 照明がつくと、最初のシーンのように明日美パソコンを打っている。 冬の酪農家風のおじさん(男)が明日美の部屋のドアをノック。 男 明日美さん。 明日美 はい。 男 ちょっとさ ええかい?(男は北海道弁です。研究してください) 明日美 はい、どうぞ。 男、ドアを開けて、部屋に入ってくる。 男 3番牛舎で牛のコッコさ生まれるで、来てくれんかい? 明日美 ついに生まれるんですか? 男 うんだ。(そうだ)あと1時間くらいだべ。 明日美 分かりました。すぐ行きます。(とパソコンをセーブし始める) 男 明日美さん、またパソコンかい? 明日美 はい。キリをつけてすぐ行きますんで。 男 ほんに、明日美さんパソコン好きだべ。 明日美 昔取った杵柄ですから。 男 今晩はなまらしばれる(寒い)べ、あったかいかっこしてって。 明日美 わかりました。 明日美パソコンをセーブし終える。 机の下からダウンジャケットとマフラー、耳当てを取り出し、身に着ける。 男 そういえば、この前あんたが作ってくれたステッカー、あれなまら評判いいべ。 明日美 この前のチーズのですか? 男 うんだ。(そうだ) 明日美 あれは、この町のチーズがとってもおいしいからですよ。 男 ほんにそう思うかい?(嬉しそう) 明日美 思いますよ。この町の牛乳で作ったチーズは世界でも十分に通用します。だからステッカーもそれに見合ったもの、と思っただけですよ。 男 あんた、前はIT企業に勤めてたって言うけど、ほんに、すごい腕前だべや。 明日美 そうですかあ。(嬉しそう)ありがとうございます。 「あれ(ステッカー)なら絶対売れるだべや」「売り込みの方も任せてください。ホームページのサイトも私がデザインしますから」 なんて言いながら、男と明日美、部屋から出ていく。 音楽が上がってくる。 奥田民生「イージューライダー」 去っていく二人と入れ替わって、カナトがやってくる。 ダウンジャケットを着て、大きなリュックサックを背負って。 手には、大きなスケッチブックを持っている。 国道らしい。 車の流れを見つめながら、意を決したように、マジックでスケッチブックに字を書く。 スケッチブックを大きく頭の上に掲げる。 「北海道」と大きな字で書かれている。 なかなか車は止まってくれない。 それでもあきらめずスケッチブックを上げ続ける。 ススム、ピッピ、明日美の順で登場して並び、白い看板にススム「ナウ」ピ「ワカ」明「ユメ」と書かれた看板を上げる。 止まってくれる車が現れた。 カナトが一心に後ろにかけていき、台の一番高いところに登る。 止まってくれたのはトラックのようだ。 それを3人は温かい目で見守る。 ススムは一心に交渉を始める。(マイム) ススムと明日美の場所を入れ替えて、「ユメワカナウ」の形にする。 音楽が大きくなり、幕 ※1 西野カナ : 三重高校の卒業生ということで敬意を表して使いました。 ※2 DAIGOと北川景子 : その時の話題によって変えてください。