平成一七年三月二十六日
南勢地区春期大会公演脚本
『教 学 愛 長 ☆
2005』
作・Nakamoo & Co.
キャスト
角松先生 山口 将史
藤井(富) 長谷川 瑶子
高城(鷹) 濱口 あかり
那須(茄) 田中
良和
#1
チャイムの音で幕が上がる。空の教室。しばらくして茄子が入ってくる。
カバンから教科書類を出して準備を始める。
しばらくして富士井が入ってくる。2人、目が合う。
茄 ……やぁ。
富 ……(頷く)
富士井、しばらく立ったまましばらく沈黙。
茄子、なかなか座らない富士井が気になる。
茄 座ったら?
富士井、頷いて茄子の隣に座る。しばらくそのままで沈黙。
茄子、沈黙に堪えかねる。
茄 これだけかな……?
富士井、無反応。
茄 ……。
富 2人きりね。
茄 ……え?
S.E TUNAMIサビ
富 ……ポッ。
茄 ?!
沈黙。
茄 先生、遅いな……。
富 ……。
茄 ……君、名前は?
富 富士井。
茄 僕は茄子。
富 知ってる。
茄 ……え?
富 ……。
茄 クラスは?
富 2組。
茄 そっか。僕は4組。
富 知ってる。
茄 ……え? ……何で知ってるの。
富 何でだと思う。
茄 ……さぁ。
富 秘密。
茄 ……。
富士井、本を取りだして読み始める。
富 エロエムエッサイムエロエムエッサイム我は求め訴えたり……
茄 それ……何?
富 占い。
茄 ……ふーん。
富 生年月日。
茄 え?
富 生年月日は?
茄 え……1月2日だけど。
富 ……エロエムエッサイムエロエムエッサイム……。
茄 ……言っておくけど、僕占いは信じないタイプだから。大体占いって根拠が……。
富 総合運……今日の貴方は悩みが解決の予感。ラッキーカラー、赤。勉強運、普通。金運、やや不調。恋愛運……運命の出会いあり。
茄 ……。
富 ……ポッ。
茄 ?
富 運命ですな。
茄 何?
富 ……茄子君。
茄 は、はい。
S,E TUNAMIサビ
富士井、茄子に寄って行く。途中で先生が入ってくる。2人、ストップ。
先 ……。
茄 あ……。
先 ……若いっていいな。
茄 !?
富 ポッ
茄 富士井さん?!
先 始めようか。
先生、手前の机を前へ引っ張る。持ってきたモノをその上に置いたりする。
起立、礼、着席。
先 今回この補習を担当する角松だ。宜しく。
じゃあ出席をとる。……富士井。
富 はい。
先 鷹木。……遅刻か? しょうがないな。……茄子。
茄 はい。
先 それでは今から補習を……。
茄 先生、まだ来てない人が居るんじゃ……。
先 まぁ、来てないんだったら仕方ない。先に始める。
茄 ……。
先 教科書開いて……
外から鷹木の声。
鷹 あーわかったよ! 五月蝿いな! 行けばいいんだろ行けば!
鷹木、勢いよく扉を開け入ってくる。
鷹 あー! あのハゲ超ウザイ!
と言いながら椅子にどっかと座る。
先 遅いぞ、鷹木。遅れるなんて聞いてないぞ。
鷹 (不機嫌に)すいませんー。
先 教科書46ページ。(書きながら)例文1。……。.
先生、ボードにかく。字が小さい。
茄子、がんばって写している。富士井、何気なく写している。鷹木、携帯をいじる。
先 ではこの訳を……鷹木、何してる?
鷹木、携帯を隠す。
先 見せなさい。
鷹木、見せない。角松、取り上げる。
先 何で携帯に電源が入っているんだ?
鷹 ……。
先 これは没収だ。
鷹 え、やめてよ。そんなの困るじゃん。
先 取られて困るんだったらするな。
鷹 ……うざい。
先 何?
鷹 なんでもありませんー。
先 とにかくこれは没収。明日職員室まで来なさい。
鷹 せんせー。
先 何だ?
鷹 ズボンのファスナー全開。
沈黙。
先 ……あっ。あ、あぁ、(あわてて閉める)
先生、前に戻る。携帯を隠す。
富 勝負パンツだった。
沈黙
茄 ……カッコイイですね!
鷹 フォローになってないよ。
先 まぁいいだろ、先生のパンツの事なんて……。
茄 どうして赤なんですか?
先 そ、それは
富 牛と戦うため。
先 な
茄 先生、牛と戦うんですか?
先 た、戦うわけないだろ!
鷹 戦わないのー?
先 当たり前だ! 関係ないだろ! そもそも色だけで決めるのは間違っている。牛と言うのは赤い色に興奮するのではなく、あの旗の動きで興奮する動物なんだぞ。
茄 そうだったんですか。
富 「へぇ〜」
皆 ……。
先 じゃぁ蘊蓄も増えた所で牛の話は終わる。補習に戻るぞ。……えーと、茄子。ここの訳。
茄 え、はい。私は公園を走っている少年を見ました。
先 よし。これは過去進行形で……
鷹木、今度はMDを出して聞き始める。先生気付く。
先 こら、鷹木。それも没収だぞ。
鷹木、無言でしまう。先生、小声でぶつくさと
先 まったく、鹿餅先生の苦労が解るよ……
鷹 あのハゲの話はしないでよ。
先 ハゲじゃなくて鹿餅先生だ。お前の担任だろうが。先生にはちゃんと敬語を……
鷹 せんせー。
先 何だ? ……(ファスナーを確認している)
鷹 はげるよ。
富 鹿餅先生みたいに。
先 ……。
茄 もしかして、ヅラですか?
先 違います。
鷹 ヅラ。
先 違う。
鷹 ヅラ!
先 違う!
富 先生。……ずれてます。
先生、頭を押さえる。
先 ってそんなわけ無いだろう!
鷹 気にしてたでしょ。
先 してません。
鷹 してた。
先 してない。
鷹 してた!
先 してない!
富 先生。……服に髪の毛が。
先 嘘!?
先生、背中を見ようとする。頑張っている。
皆 ……。
先 気にしてなんかないぞ。
鷹 ……。
先 ……あぁしまった、プリントを忘れてきた。すぐ戻ってくるから待っているように。
先生、退場。
#2
しばらく沈黙。
富 ……逃げたね……。
鷹 何あれ。マジムカツクし。ねぇ、誰あれ。
茄 ……角松先生だって。
鷹 そんなヤツ居た?
茄 ……僕もあんまり知らない。
鷹 ふーん。
鷹木、角松が居ない事を確認し、携帯を探す。見つけてまた椅子に座る。
茄 ……。
鷹木、メールを打っている。茄子、迷惑そうに見る。
鷹 ちょっと。
茄 ……。
鷹 何見てんのよ。
茄 ……。
鷹 返事くらいしなさいよ。
茄 何だよ……。
鷹 それはこっちの台詞だって。
茄 携帯、駄目なんじゃないの?
鷹 はぁ? ばれなきゃいいのよ。皆やってることだし。
茄 ……。
鷹 あ、あんた真面目君でしょ。
茄 そんな名前じゃない。
鷹 じゃあ、何。
茄 ……。
鷹 聞いてんの。
茄 ……茄子。
鷹 茄子……ナスゥ? なすび? なすびだって! 変な名前。
茄 五月蠅いよ! 僕だって好きでそんな名前になったんじゃない。
鷹 そんな怒んなくてもいいじゃん。なすび君。
茄 なすびじゃ……
鷹 いいじゃん、別に。
茄 よくない!
鷹 何名前くらいで熱くなってんの? 馬鹿じゃない?
茄 ……人をからかって面白いか?
鷹 別にからかってなんか無いよ。本当のこと言っただけじゃん。
茄 ……。
鷹 あんたは?
富 富士井。
鷹 ふーん。
と、またメールを打ち始める。
茄 何してるんだ?
鷹 見てわかんない? メール。
茄 ……補習受けに来たんじゃないのか?
鷹 誰が。
茄 赤点とったんだろ?
鷹 うん。全部ね。
茄 全部?!
鷹 あ、音楽以外。
茄 でも……。
鷹 驚いた?
茄 驚いた……っていうか、勉強しようよ!
鷹 嫌よ。
茄 留年するよ。
鷹 いいよ別に。留年したら学校辞めるし。勉強できなくったって生きて行けるんだからさ。
茄 君って……。
鷹 何? あんたも赤点なんでしょ? 違うの?
茄 僕は自主参加。
鷹 えーっ! 嘘っ! アンタ大真面目君決定だわ。
茄 別にそこまで真面目ってワケじゃ……。
鷹 あぁ。……もしかしてフリだけってやつ?
茄 フリだなんて……!
鷹 そういうやつって友達少ないんだよねー。可哀想〜。
茄 僕は……!
鷹 富士井さんだっけ? あんたは?
富 赤点。
鷹 だよねー。あのテストで赤点取らない奴おかしいって……。
茄 富士井さん、まさか君まで全部赤点なんてこと無いよね?
富 ライティングと現代文と世界史。
鷹 文系駄目なんだ。
茄 じゃあ得意なのは?
富 リーディングと古典と日本史。
2人 ……。
鷹 文系……駄目じゃないね。
茄 ……何か微妙。
鷹 珍しいタイプだね。
富 よく言われる。
2人 ……。
茄 でも富士井さん古典得意なんだ。いいなぁ。僕苦手なんだよ。
鷹 私も。
茄 君は全部だろ。
鷹 まぁそうだけど。
茄 富士井さん、古典ちょっと教えてくれないかな?
富 いいよ。
茄子、聞く気満々。鷹木、あまり乗り気がしない。
富 代表的な古典、その1。……黒板消しをドアの間に挟む。
茄 ……。
鷹 ……。
茄 ……古典的だね……。
鷹 うん……。
富 その2。取調室には……カツ丼。
2人 ……。
鷹 牛丼と親子丼は危ないからね。
富 その3。戦隊ものの敵は必ず巨大化する。
茄 今は味方も巨大化するよね。
富 その4。変な語尾。
鷹 例えば?
茄 僕はなすびじゃないナス? とか?
鷹 ……。
茄 流石にそれはないよね!
富 その5。
鷹 まだあるの?!
富 東京人のつっこみは……なんでやねん。(「なん」にアクセント)
2人 ……。
鷹 なんでやねん。
茄 富士井さんって……いろいろ物知りだね。
富 よく言われる。
2人 ……。
しばらく沈黙。
鷹 あいつ帰ってこないじゃん。やる気あんの?
茄 プリント探してるんじゃないか?
鷹 まぁ、それならそれで遅いほうが良いけど。
鷹木、メールチェックをして、鞄から雑誌とお菓子(ポッキー?)を取り出す。
食べながら読みはじめる。茄子、見る。
鷹 ……何。
茄 ……学校にお菓子なんて持ちこんでるのか?
鷹 普通だし。
茄 補習中だよ。
鷹 五月蝿いなぁ。あ、もしかして欲しい?
茄 いらない。
鷹 あっそ。富士井さんは?
富 チョコだけ食べる。
2 ……。
鷹 ごめん……残り困るから。
茄 ……。(鷹を見る)
鷹 ……今度は何。
茄 いや……。……何よんでるのかと思って。
鷹 ただの音楽雑誌。(表紙を見せる)
茄 ……ふーん。
鷹 あんたこういうの興味ないでしょ。
茄 そうでもない。音楽はけっこう聴くよ。
鷹 えー、なんか想像できない……。あ、クラシックとか?
茄 ……ラグフェア―とか。
鷹 古っ! 似合わなっ。
茄 い、いいじゃないか別に。
鷹 何、ボイパとかできるわけ?
茄 ちょっとだけ。
鷹 え、やってみてよ。
茄 ……(微妙なボイパ)
鷹 ……。
茄 ……。いいじゃないか別に……。
富 ……私も好きだな。ラグフェアー……。ぶぶ、ぱ。
茄 ……。
鷹 ……。
茄 君は?
鷹 今はやっぱオレンジレンジでしょ。
茄 ……オレンジレンジャー? 戦隊モノ?
鷹 違うよ! ってあんた知らないの?
茄 うん。あんまり……
鷹 レンジよオレンジレンジ。あの良さが解らないなんて勿体ないわねー。あの歌詞とかが良いんだよ。*とか以心伝心とか……
富 僕らはいつも奇人変人♪
鷹 ……。
茄 そんな歌?
鷹 違う。
沈黙。
鷹木、またメールを打ち始める。
茄 誰に打ってるの?
鷹 関係ないでしょ。(送信する)
茄 ……。
鷹 あー、遅いし。何やってるんだろ。
茄 先生?
鷹 まぁそっちもだけど。
茄 ……。
鷹 これさぁ、赤点者補習でしょ?
茄 うん。
鷹 あいつやる気ないんじゃないの? 帰ってこないしさァ。大体3人だけで真面目に授業してくれるわけないじゃん。
茄 そうかなぁ?
鷹 そうよ。
茄 でも……先生が、成績上げたい奴は来いって……。
鷹 成績って、上げてどうするの?
茄 自分のためだよ。
鷹 わけわかんない。大体こんな勉強する意味わかんないし。
茄 成績良かったら良い大学に行けるだろ。
鷹 やっぱりあんま意味ないじゃん。大体さぁ、大学に行って何になるっていうのよ。
茄 良い大学を出た方が就職にも有利だろ。将来も安定するし。
鷹 まぁ、そりゃそうかもしれないけど。どっちにしろ私には関係ない話ね。はぁ〜あ、早く終わらないかなー。せめて教師がおもしろいヤツだったらいいのになー。
富 それ、できる。
鷹 え?
茄 富士井さん?
富 黒魔術で。
沈黙
2人 黒魔術?
富士井、黒布を取り出して黒魔術セットを出す。
鷹 そ、それ何。
富 黒魔術セット。
鷹 うわー……。
富 通販で買った。
2 通販かよ!
富 どんな先生がいいか、言って。
鷹 え?
茄 なんかめちゃくちゃ怪しいけど……。
鷹 でも何かコックリさんっぽくて面白そう。えっと、どんな先生がいいか、だよね。
富 (頷く)
先生登場してくる。鷹辺りの声を聞き覗き見。
鷹 うーん、そうだなぁ。カッコ良くて面白くって楽しい先生がいいな!
茄 アイドルじゃないんだから……。
鷹 五月蝿いなすび。(茄 ナスビじゃ……)ね、どう富士井さん?
富 もっと……具体的に。
鷹 具体的?
茄 詳しく言えって事だろ?
鷹 そんなことわかってるわよ。
茄 ……。
鷹 具体的ねぇ……。
茄 とりあえず、先生の駄目なところを上げて、その逆にしてみたらどうかな。
鷹 あぁ、それいいかも。流石なすび。
茄 なすびじゃない。
鷹 そうだなー。声が小さくて何言ってるかさっぱり。
茄 字が小さい。
鷹 暗い。
茄 先生が邪魔で板書できない。
鷹 弱そうなくせに偉そう。あ、後なんかなまこっぽい。
茄 なまこ?
鷹 なまこ。
茄 確かに……。
鷹 そんなもんでどう?
富 わかった。
富士井、怪しげな呪文を唱える。(エコエコアザラク・エコエコザメラク(?)
鷹 どう変わるか楽しみー。
茄 期待しないほうがいいと思う……。
先生何か決心して入ってくる。生徒、あわてて元に戻る。
先生、前に立って深呼吸。
先 それではー今からプリントをくばる! なくさないようにー。質問があれば……
富士井、目覚まし時計を鳴らす。
鷹 うわっっ! 何この音?!
茄 ふ、富士井さん! 止めて!
富士井、止める。
富 対抗してみた。
鷹 しなくていいよ!
先 ま、負けた。
鷹 何の勝負?!
茄 先生! そんなに声ださなくても聞こえますから!
先 そうか……。じゃぁプリントしてくれ。
みんなプリントをやりはじめる。
先 あぁ、ついでに補足だが……。
先生、生徒の方を向いたまま、字を書く。
先 2番のA問題、訂正があってな……
と言ってでかでかとぐちゃぐちゃと書き出す。
茄 先生。
先 何だね?
茄 見えません。
先生、ボードからイキオイよく離れる。
皆 ……。
茄 いや、そうではなく字が読めません。
先 あ、これは失礼。
先生戻る。でかでかと書き直してから、アップ。
茄 先生……何してるんですか?
先 いやー、先生最近トレーニングしてなかったから、ちょっとやっとこうかなーと思ってな。
鷹 トレーニング?
先生、板を持つ。
先 角松―ボンバー!
割る。
皆 おぉー。
鷹 先生って強かったんだぁー。
先 ははは。
茄子、近くの板を拾う。
茄 これ……割れ目が鮮やかじゃないですか……。
沈黙
先 ははは、それは目の錯覚と言うやつだよ。ははは何言ってんだ茄子―。
皆 ……。
先 みんなで先生をみんなー。
皆 ……。
富 「へぇ〜」
先 あ、先生、忘れ物してきたよ。……クッ。
先生出ていく。
#3
鷹 何か黒魔術効いてない?!
茄 でもなんか変だったよアレ。特に最後とか「クッ」とか言ってたし。絶対変だって……。
鷹 (聞いてない)富士井さん、凄い!
富 まあね。
鷹 ねぇ、あれ誰にでも効くの?
富 まあね。
鷹 なすびにも?
富 まあね。(ニヤリ)
茄 ……!(怖気)
鷹 そっかーじゃあまた後日お願いしようかなー。
茄 って、鷹木さん、誰にそんなことしたいの?
鷹 誰でもいいでしょ。
茄 ……。
鷹 ねぇ。もっとやってみようよ。
茄 え、またやるの?
鷹 何よ。なすびは黙ってな。
茄 なすびじゃない。
鷹 はいはい。じゃぁ次はね……。
茄子、先生の影を見る。先生、隠れる。
茄 (同時に)あ……。
鷹 (同時に)やっぱり黒マントの似合うカッコイイ人がいいよね!
茄 ……黒マント?
鷹 黒マント。
茄 でも黒マントって……。
富 ……。(用意をしている)
鷹 いいじゃんか。
富 ……薔薇と仮面付きで。
茄 富士井さんまで……。
鷹 格好良さをどう表すかがミソよね。
茄 ……。
富士井、怪しげな呪文を唱える。と音楽が流れる。
茄 な、何だ?
富 セーラー○ーン。
茄 やっぱり………。
鷹 古ー……
先生入ってくる。カセットデッキをつくえに置き、踊る。
歌に入る前に富士井がデッキを止める。しばらく場が固まる。
生徒 ……。
茄 (呆れて)先生、その格好何ですか?
先 HAHAHAHAー!
先生、薔薇をさっと出す。
先 私は乙女達のピンチに必ず現れる…。
茄 僕男なんですけど。
先 愛と正義の……!!
富 変態教師。
先 !
鷹 確かにねぇ。
先 う、う……先生……実はセーラー○ーンが好きなんだ!
場、固まる。
茄 (ぼそっと)僕も……。
先鷹 ?!
富士井、茄子を殴る。
鷹 い、今グーで?!
茄子、驚きまくる。富士井、泣く(マネ)。
先 ……茄子、たとい二次元でも浮気は駄目だぞ。
茄 なっ?!
鷹 あんた達、付き合ってたの?
茄 ち、違うよ!
鷹 だって泣いてるじゃん。
茄 泣きマネだよ!
先 可哀想に……。
茄 だ、だからぁ!
鷹 彼女いたんだ〜。へぇ〜。
茄 違うってば!
先 (富士井に)まぁ、人生何事も経験だよ。
富 (頷く)
鷹 あーぁ。男として最低ね。
茄 何で僕が……
鷹 正直に白状しなさいよ。
茄 だから、違うって言ってるだろ!
先 だって……。
茄 富士井さんが勝手にやってるだけなんです!
鷹 (寄って)……そうなの、富士井さん?
富 ……。
鷹 ……そう解ったわ。
茄 ホッ。
鷹 富士井さん、頑張ってね。
茄 えぇ?!
鷹 茄子、アンタも罪な男ね……。
茄 えぇえ?!
先 茄子、同じ男として応援するよ。
茄 ……。
鷹 なすび、富士井さんに謝っときな。
茄 な、なんで……
鷹 女の子が自分のせいで泣いてるのよ? 普通謝るでしょ。
茄 え、えぇ……
先 茄子。ここは鷹木の言う通りだぞ。
茄 う……僕は……。
鷹 なすび。
先 茄子。
茄 ご、ごめんなさい。
富 ……茄子君。
茄 はい?!
富 今回は許してあげる。
茄 は。
富 今度言ったら、呪うから。
皆 ……。
鷹 もてる男はつらいね。
先 茄子、頑張れ。
沈黙。
茄 (何事もなかったように)先生。授業に戻ってください。
先 え……あ、あぁそうだな。
茄 ちょっとどうかと思います。その……コスプレ。
先 ……。
先生、こそこそと着替える。落ち込んでいる。
一同、固まってひそひそと話す。
鷹 本当に黒魔術?
茄 ……信じられないな。
富 実はマニア。
鷹 いや、そこじゃなくて。
茄 ……先生、かなり落ち込んでないか?
先 さぁ! 授業を始めよう☆
皆 立ち直り早。
先 HAHAHA。先生は「明るく・前向き・誠心・誠意・生徒のために頑張ろう」がモットーだ。さあ、始めるぞ。
鷹 ねぇ、もうちょっと何かやってみない?
先 そこぉ! お喋りしないで前向けよ!
茄子、鷹木もとに戻る。
先 では授業を……
……あれ、ペンが出ないなぁ。ちょっと行って新しいの持ってくる。
すぐ戻るから待っているように。
再び教室から出る先生。
#4
鷹 また出てったし。
茄 ますます怪しい。
富士井、ペンを持つ。
富 使用済み。
鷹 嘘。……うわ、ばっちり書いてあるし。
茄 几帳面なんだ……。
鷹 いや、いくら几帳面でも普通捨てるでしょ。
富 貧乏性。
鷹 ああ、そうか。
茄 捨てたいけど捨てられないってやつだね……。
鷹 何ソレ。捨てちゃえ。
鷹、使用済みペンを捨てる。皆席に戻る。
茄 絶対怪しいよ。
鷹 確かにここまでくると……ちょっと怪しいかも。
富 ……。
鷹 富士井さん、どうなの?
富 ……。
茄 どっちにしろ先生の行動はかなりおかしい。
……僕、前先生がそこから覗いてるの見えたんだよ。
鷹 ……まじで?
富 ……。
全員、ゆっくり見る。
皆 見てるよ……。
鷹 ねぇ、どういうこと?
茄 黒魔術なんて嘘だったって事になるな。どうなんだ富士井さん?
富 ……。
鷹 でもあの行動のおかしさからしたら、黒魔術が効いてるのかもよ。
茄 確かにあれは普通の人間がする行動じゃないけど……。
鷹 で、あれはどうするの?
茄 どうするって言われても……。
鷹 ……やだーなんか気持ち悪い……。
放送が入る。「角松先生、お電話です。」先生、去る。
鷹 行っちゃった。
茄 そういや先生って、担任持ってるのかなぁ。
富 特別教室担当。
茄 あ、そうなんだ。
鷹 何で知ってるの?
富 黒魔術で透視。
2 ……。
茄 特別教室かぁ。
鷹 問題児とか行ってるクラスでしょ?
茄 問題児っていうか、教室に行けない人のためのクラスだよ。
鷹 同じでしょ。
茄 ……。
鷹 まぁ私には関係無いけどサァ、そんな人たち。
茄 ……。
携帯のバイブが鳴る。鷹木、ディスプレイを確認。落胆。切る。
茄 電話じゃないのか?
鷹 関係ないでしょ。
またかかってくる。
鷹 あー! うざい。(出る)はいもしもし。……うん。
……ちゃんと出てるっつーの。……。五月蝿いなぁ。……は? ……。
はいはいごめんなさい。学校ではちゃんと電源切りますさようなら。
電話を切る。沈黙。
茄 誰?
鷹 親。わざわざ電話すんじゃねーっつーの。
茄 ……。
鷹 あー、なんかイライラしてきた。
茄 ……。
また電話。今度は出る。
鷹 もしもし! もぅ、返事遅い! ……うん。あのハゲに捕まったの。
……メール送ったでしょ?……え、何?……。ちょっと待ってよ!
何で一方的に……。ちょっと、桂? ……「ごめん」って……ちょっと!
電話が切れる。鷹木、切る。しばらく沈黙。
鷹 はーあ。また振られちゃった。
茄 ……。
鷹 ……。
茄 ショックじゃないのか?
鷹 別に。……どうせ遊びだし。
茄 ……。
鷹 なんかさぁ、もう補習とかどうでもいいって感じなんだけど。
茄 ……でも終わるまで出られないよ。まだ時間あるし。
鷹 最悪。
茄 それにしても今日ここに来て補習って言う補習してないなぁ。
鷹 それでいいの。教師の話なんて聞かなくていいのよ。
茄 ……僕は嫌だな。せっかく来たのに。
鷹 あぁ、もう。これだから真面目君は。
茄 僕は勉強したくて補習に来たんだ。
鷹 じゃあ一人でやってればいいじゃん。
茄 一人でできないから来てるんだ。
鷹 ああ、もうしつこい。
茄 今度先生が帰ってきたら、ちゃんと授業してもらう。
鷹 はぁ何いってんの? 授業しても暇じゃん。てゆーか早く帰りたい。
茄 ……。
鷹 ねぇそう思わないの?
茄 君は自分が勉強していないから参加させられてるんだろ。
鷹 何よ偉そうに。
茄 何にでも勉強は必要だよ。
鷹 だから何で全然関係無いこととか勉強しなきゃいけないわけ?
茄 ……自分の為だって言っただろ。勉強は裏切らない。
鷹 だからぁ。……はぁ、もういい。あんたと話してても同じ繰り返しだわ。じゃあ聞くけど、あんた本当に勉強が自分のためになってんの?
茄 まだ、わからない。
鷹 何それ。
茄 だからまだそれはわからない。でも今やらなきゃ駄目なんだ。
鷹 どうしてよ。
茄 ……。
鷹 何で黙るのよ。
茄 君は、どうなんだよ。
鷹 は?
茄 君は勉強しないで将来どうするんだよ。
鷹 私は色々考えてるわよ。
茄 色々って何だよ。
鷹 五月蝿いな。何であんたにそんな事言わなきゃいけないの。
茄 何も決まっていないうちから勉強諦めるのか?
鷹 何先公みたいなこと言ってんの? ムカツク。誰も決まってないなんて言ってないじゃん。
茄 じゃあ何するんだよ。
鷹 ……。
茄 言えないような事なのか?
鷹 作詞家。
茄 作詞家?
鷹 そうよ。悪かったわね。
茄 誰も悪いなんて言ってないじゃないか。
鷹 親も先公も「そんなものお前にはなれない」って言ってるけどさ!
茄 夢を認められないから勉強しないなんておかしいじゃないか。
鷹 五月蝿い! こんな勉強なんて関係ないの!
茄 君は小学生か!
鷹 高校生よ!
茄 ならもうちょっと考えたらどうなんだ?
鷹 ……わかった。……こうなったら私が自分で授業させないようにしてやるから。
茄 鷹木さん!
先生、入ってくる。一同慌てて戻る。
先 すまんな。では始めよう。
鷹 せんせー!
先 ん? なんだー?
鷹 先生って私達のクラス持ってないよねー。
先 そうだな、今日が初めてだなぁ。
鷹 だから先生の事をもっと知りたいなー。
先 あ、そうか? それもそうだな……よし! じゃぁ俺が小学生の時の話をしよう。昔、小学校で鳩を飼ってたんだ。こう見えても世話好きでね。飼育係をしていたんだ。ある日、いつものように鳩小屋を掃除していたら……なんと……
鷹 なんと?
先 頭の上にフンを落とされたんだ……。
皆 ……(うわあ)……。
先 悲しかったナァ……冬休みに……雪の降る中小屋に行き……掃除をしている小学生の僕の頭に……感謝の気持ちならともかくフンをくれやがった……! 先生に言ったら「それはね、鳩さんたちが運を貴方につけてくれたのよ」って言われたよ。そうか、俺は幸せ者だったんだ……って小学生の私は思ったんだ。その後家に帰ってそのことを親に話したら「それ運じゃなくてただの汚いうんこじゃん」ってさらりと言われたよ。あの時の小学生の僕の純粋な心を壊された気持ち……お前達に解るかいいや解るまい! 僕は……僕は……っっ!
鷹 せんせー?
富 泣いてるよ。
鷹 うそ。先生ー、そんな気を落とさなくても…。
先 大丈夫だ。先生は「明るく・前向き・誠心・誠意・生徒のために頑張ろう」がモットーだからな!
皆 ……。
茄 先生授業してください。
先 はっ。そうか。すまなかった。では授業を再開する。
茄 先生、質問があるんですが……ページ55の問2。
先 あ、あぁ、ココの知覚動詞はsee、目的語+動詞の原形で能動態になって……ここが
鷹 せんせー! まだ私先生の昔話聞きたいです!
先 僕はまだ若いぞ。
茄 先生、授業続けて下さい。
先 あ、ああ、えっと……
鷹 お話してくださいー!
先 え?
茄 授業してください。
先 う、うん
鷹 せんせー!
先 あぁ……。
茄 先生!
先 ……。
2人 先生!
先 ……。ちょっとトイレ行ってくる!
先生、逃げるように出ていく。
#5
鷹木、茄子を睨む。
鷹 ちょっとなすび、どう言う事?
茄 ……なすびじゃない。
鷹 考えろって言ったのあんたでしょ。
茄 確かに言ったけど君の頭じゃ意味が理解できてなかったみたいだ。
鷹 はぁ? 何それ。マジムカツク言い方。
茄 ……。
鷹 いつまで良い子ぶってればいいの?
茄 誰も良い子ぶってなんかない。
鷹 どう見たって良い子ぶってるじゃない。何考えてんの?
茄 君こそ何を考えてるんだ? ここには授業受けにきてるんだぞ。
鷹 は、授業?
茄 そうだよ。
鷹 なまこの授業受けて何が楽しいのよ?
茄 僕は勉強するために来たんだ。
鷹 あんたがどんだけ勉強しようと私には関係無いけどね、わざわざ土曜の放課後に補習来て勉強する奴なんて普通居ないのよ。そもそも何で教師に関わりたがるわけ?
勉強なんて一人でもできるでしょ。あ、もしかして「僕は勉強してます」って自己アピールして内申点狙い? くだらねー。
茄 ……君は教師を何だと思ってるんだ?
鷹 ただのうざい大人。
茄 ……そんなのじゃない。
鷹 何でそんな知ったような口ぶりなの? 先公なんて皆同じよ。
茄 違う。
鷹 ……わけがわからないわ。
茄 そっちの方こそ。
鷹 それはこっちの台詞よ。あ、あんた頭が固すぎて勉強意外のことはわかんないのかもね。
茄 何を!
鷹 何よ?
にらみ合う2人。
茄 富士井さん……。
鷹 え?
茄 富士井さんはどうなんだ? さっきから何も言ってないじゃないか。
鷹 ねぇ、富士井さん、あんたはどうなの?
富 ……。
鷹 何とか言いなさいよ。
富 ……別に。
茄 何だよ君は! なんのためにここに居るんだ?
鷹 別にって何よ。何も考えてないの?!
富 ……。
鷹 言いなさいよ!
富 ……。
茄 ああそうか! もう僕たちと関わりたくないって言うんだな!
鷹 もぅ、何考えてるのよ! あーイライラする! 何で無口無表情女とくそ真面目ナスビと、来たくもない補習に来てイライラしなきゃなんないの? あーもぅ最悪だし!
茄 何だ、君だって不良じゃないか。真面目に授業をうけない自分が悪いんだろう。
鷹 何よ。ベラベラと偉そうなこと言ってさァ。お前は神様かっつーの。
茄 何だと……。
鷹 私はあんたが偉そうにしてるのが気にくわないの。
茄 君だってそうだよ。
鷹 私がいつ偉そうにしたって言うのよ。
茄 今だって十分そうだよ。
鷹 私は本当のこと言ってるだけよ。あんたは先公の真似してるだけでしょ?
茄 違うよ! 僕は自分の考えで行動してるんだ。
鷹 何の為に勉強してるかわからないくせに、自分の考えだって言うの? それって違うんじゃない? あんたは親や先公に言われた通りにしてるだけでしょ。そんなの自分の考えじゃない!
茄 君は自分勝手なだけじゃないか! 少しは先生の言う事を聞いたらどうなんだ?
間
鷹 じゃあ聞いてやろうじゃないの。
茄 ……。
鷹木、扉を開ける。先生、しぶしぶ教室に入る。鷹木、椅子に座る。
鷹 せんせー、何でそんなことしてんの?
先 え、何を……。
茄 僕達を見てたんじゃないんですか?
先 ……。
鷹 何で黙るの?
先 ……先生はただみんなの希望に……
鷹 はぁ? 何言ってるの?
茄 はっきり言っておかしいだけですよ。
沈黙。
先 そうか。
鷹 そう。何考えてるの?
先 僕は……ただ、君達の理想の先生になりたかった。……それだけだ。
皆 ……。
鷹 わけわかんない。
茄 先生。
先 ?
茄 何で、あんな無茶苦茶な行動をしたんですか?
先 ちょっと欲張ってみただけだ。
鷹 欲張る?
先 どんな生徒にも好かれる先生になりたかったんだ。
鷹 何で。
先 ……それが僕の目標だから。
茄 ……でも、なんであんな……。
先 性分かな。
2 ……。
茄 でも、いくら何でもやりすぎだと思います。……コスプレとか。
先 生徒の理想なら仕方ないと思ったんだ。……こんな性分だから。
富 要は、単純。
先 ……。
鷹 でも、なんでコソコソするわけ? ハッキリ聞けばいいじゃん。
先 面と向かって聞きにくいだろ。
たまたま聞こえたから、この際やってやろうと思ったんだ。
茄 そうだったんですか……。
鷹 でもなんか納得できない。特別教室でもそんな感じなワケ?
先 いや……まだ担当になったのは最近で、どう生徒に接すればいいのかよくわからないんだ。
鷹 んじゃ私達はその実験台?
先 実験台なんて……。
茄 でも先生、その生徒たちにはちゃんと聞いてあげたほうがいいと思いますよ。
先 そうか?
鷹 なんであんたそんな事解るわけ?
茄 僕も特別教室の生徒だったから。
鷹 ……。
茄 だから、何となく解る気がするんです。
先 ……。
茄 ……僕は……小学生の頃からよくいじめられてたんです。「なすび」ってずっとからかわれて。
鷹 ……。
茄 僕はそれが嫌でだんだん教室に入れなくなって、特別教室に通ってたんです。でも中学の時、ある先生が僕を助けてくれて。色々あったけど、何とか教室に入れるまでになりました。……だけどいじめはなかなか無くならなくて、学校に行くのが嫌になる時がありました。でもそんなとき先生の言葉を思い出すんです。「諦めるな、諦めない限り可能性は0じゃない。」
鷹 ……。
茄 なんかその言葉に励まされて、先生を尊敬しました。
だからその時僕は、僕も先生になろうって思ったんです。簡単な理由だけど、僕にはそれで十分でした。中学を卒業して、何とかこの高校に入りました。……でも最近、必死で勉強しているのに成績は良くならなくって。そんな自分が嫌になって……。
先 ……。
茄 僕はだんだん何がしたいのか解らなくなってきてるんです。必死に勉強しても悩んでもなかなかその答えは出てきてくれないんです。
先 それは当たり前だろう。
茄 え?
先 悩むのは良い事だ。それだけ真剣になってるってことだからな。
そんな事言ったら僕だって今でも迷うときがあるぞ。「自分はこんな人生で本当にいいのか」ってな。
茄 ……。
先 でもなぁ、もし最初から人生の目標が決まっていたらつまらないと思わないか? 「これだ!」ってものを探し当てるまで、悩んで迷って……そしてやっとたどり着ける。そのほうが面白いと思うんだ。
茄 でも僕にはたどり着く自信なんて無いです……。
先 自信なんてなくてもいい。解らないなら何度でも迷えばいい。お前がもし間違った方向へ進んでいったとしたら俺は何回でも教えてやる。……それが僕に出来る事だからな。
茄 ……。
鷹 ……。
先 鷹木、お前は作詞家になりたいんだろう?
鷹 な、何よ。
先 だったら英単語の一つでも覚えてみたらどうだ?
鷹 ……。
先 親や教師が五月蝿く言うのはお前を何とかしたいと思ってるからなんだぞ。
鷹 うざいだけ。
先 どうしてうざいんだ?
鷹 だって! ……作詞家なんてお前には無理だって言うし。詩なんて書いてる暇があったら勉強しろって。私は……本気なのに。
先 お前はまだ高校生だろう。
鷹 そうよ。ナスビと同じ事言わないでくれる。
先 まだまだこれから新しい事に出会う機会が沢山ある。だからもっと周りにも目を向けて欲しい。そうすれば自分の知らない世界が見えてくる。別にお前が作詞家になるのは無理だなんて言わない。そんな事誰にもわからないからな。だがなるにしろならないにしろ、周りを見る目は必要だと思うぞ。
鷹 ……。
先 勉強も同じだ。見る前からつまらないかどうかなんて解らないだろう。
鷹 ……そうかな。
先 そうだ。音楽は赤点じゃなかったんだろ?
鷹 うん。だって好きだもん。
先 だったら他の物もできる。
鷹 そういう問題?
先 ああ。自分を信じろ。
鷹 ……。
先 富士井、お前は……
富 私、二人に謝ります。
茄 え?
富 黒魔術……本当は使えない。
鷹 まぁ、うすうす思ってたけど。
先 いや、富士井はある意味魔法を使ったよ。
鷹 え?
先 富士井が2人から色々聞き出してくれたおかげで、僕が行動に移したわけだし。
あの呪文のおかげで勇気が出た気もした。
鷹 えー、本当に?
茄 富士井さん。富士井さんは嘘なんかついてないよ。
富 ?
茄 だって、今日の占い当たってるじゃないか。
富 ……。(頷く)
鷹 え、何の話?
先 まぁ正直に謝ることはいいことだ。
富 ……。(頷く)
鷹 ?
先 ……。富士井、お前将来やりたいことは?
鷹 黒魔術じゃないの?
富 ……看護士。
皆 ……。
茄 先生。
先 何だ?
茄 どうして先生は教師になろうと思ったんですか?
先 ……実は、先生は……
鷹 先生は?
先 歌うお笑い芸人になりたかった……。
皆 ……。
鷹 嘘でしょ。
先 ……。
茄 本当はどうしてですか?
先 知りたいか?
富 目立ちたかったから。
鷹 あ、そうか。
茄 なるほど……。
先 ち、違う違う!
鷹 じゃぁ教えてよ。
先 うーん。……そうだな。先生、実は問題児だったんだ。
鷹 先生が?
茄 今の先生からは想像できないな。
先 先生の担任は鹿餅先生だったんだ。
鷹 えー、あのハゲが?
先 確かに鹿餅先生は昔から薄かったけどな…。
鷹 そうなんだー。
先 まぁ、それでな。先生はよく叱られたんだ。ほら、鹿餅先生、怒ると恐いだろ? でも、今の私があるのは鹿餅先生のおかげなんだ。私を助けてくれて、大学にまで行かせてくれた。厳しくて辛かったけど、今は後悔してない。むしろ感謝してる。
鷹 ハゲって五月蝿いだけじゃん。
先 鷹木。お前にもそのうち解るようになるさ。
鷹 本当にー?
先 鹿餅先生ならなおさらな。
鷹 ふーん……。
茄 ……先生、今日は先生が担当でよかったです。
先 そうかな……。
鷹 うん。私、先生の事ちょっと見直した。ちょっとだけだけど。
富 私も……。
先 ありがとう。
#6
先生、時計を見る。
先 お、……そろそろ時間だな。それじゃ宿題出すぞ。教科書の練習問題1〜3! 今度までにやってくるように!
鷹 え〜! 何で補習で宿題出るの?!
先 当たり前だ。今度までにやって来いよ。茄子、号令頼むよ。
茄 起立。礼。
皆 ありがとうございました。
それぞれ、片付けを始める。鷹木、立ち去ろうとする。
鷹 ……。
カバンから紙切れを取り出す。
茄 何?
鷹 ……私の詩。読んだら感想聞かせてよね。
茄 え……うん。
鷹 先生も。
先 えっ、あぁ是非読ませてもらうよ。
富士井、鷹木に近づく。
富 作曲は…任せて。
鷹 ……は、はは。考えとくわ……。それじゃ。
先 さようなら。
鷹木教室を出る。先生、ボードの字を消そうとする。
茄 先生、僕が消しますよ。
先 そうか、ありがとう。
富士井、先生の近くまで来て止まる。
富 今度の補習、何時からですか。
先 え……今日と同じの予定です。
富 わかりました。
先 ……。
富 茄子君。
茄 ?
富 今度も……頑張ろうね。
茄 え……うん。
富士井、教室をでる直前でまた止まる。
富 先生。
先 何だ?
富 勝負パンツ見えてます。
先 ……!
富 嘘です。さようなら。
富士井、教室を出る。
先 ……。
茄 ……。
先 ……。(茄を見る。)
茄 (しらんぷり。ボードの字を消す。)
先 じゃぁ、後よろしくな。さようなら。
茄 はい。さようなら。
先生、教室を出る。
茄子、字を消し終わり、片付けをする。茄子、電気を消す。教室から出て
幕