2023年度第40回中南勢地区春季大会参加脚本

上演日時:2024年3月28日(木)〔大会2日目4校目〕【枠番 】

 

 

 Happy Birthday

細川くるみ・作(創作)

 

上演団体:三重高校演劇部

1月27日第2稿

 

 

ハルナ 長女 矢守柚里子

ナツミ 次女 細川くるみ

チアキ 三女 川井志歩

ミフユ 四女 山口結愛

母(声のみ)

 

 

1 プロローグ 誕生日あるいはチアキの夢の中 

               音楽

               緞帳が開くと、四姉妹のリビングルーム。

               テーブルとソファーの周りだけが明るくなっている。

               ハルナ、ナツミ、チアキがテーブルを囲んで座っている。

               夜中に起きてる感があるといいなあ。

               例えば、テーブルにマグカップが3つあったり、

               ハルナは編み物、ナツミは宿題をしているとか。。

               チアキは眠りそうになりながら、何とか座っている。

               上手側のソファーで、ミフユが寝ている。

 

チアキ 眠い

ナツミ    寝れば?

チアキ    やだよ、起きてるもん

ハルナ    あとちょっとだからね

チアキ    うん!

ナツミ    アタシ全然眠くないよ!

チアキ    ナツ姉ちゃんはいつもこんくらいまで起きてるじゃん

ナツミ    チアキはまだまだ子供だね!

チアキ    ナツ姉ちゃんだってまだ子供だよ!

ナツミ    アタシはもう高校生だよ?

チアキ    高校生なんてまだ子供だし!

ナツミ    小学生のチアキには言われたくないなあ

チアキ    うるさい!

ハルナ    ほら喧嘩しない

ナツミ    あー怒られちゃったー!

ハルナ    ナツミ

ナツミ    アタシ?!

ハルナ    ふっかけたのはあんたでしょ

ナツミ    (納得できない様子)……てか、チアキが頑張って起きてたところで、当の本人はぐっすりだけど

ハルナ    絶対寝ない!って意気込んでたのにね

チアキ    疲れたんだよ、今日すっごいはしゃいでたもん

ナツミ    まだ当日じゃないのにね

チアキ    明日休みだから今日いっぱい祝ってもらったらしいよ

ハルナ    それでかあ

ナツミ    (時計を見て)あ!やばいもうすぐ!

チアキ    ほんとだ! (三姉妹ソファーを取り囲んで)

ナ&チ     5!4!3!2!1!ミフユ!お誕生日おめでとうー!!

 

              

 

ナツミ    いや起きないんかい!

チアキ    頑張って起きてたのにー

ハルナ    ミフユ、ミフユ(優しく揺り動かす)

ミフユ    ……ん?

ナツミ    起きた!

ミフユ    何?

ナ&チ     ミフユ、お誕生日おめでとー!

ミフユ    え!もう?!

ハルナ    日付変わったよ

ミフユ    本当に?!

ハルナ    おめでとうミフユ

ナツミ    ミフユってば絶対起きてるって言ったのに寝ちゃうんだもんなー

ミフユ    悔しいー!

チアキ    来年は頑張りなよ

ミフユ    次は絶対起きてる!

ナツミ    毎年言ってんじゃん

ミフユ    いや!次は絶対!

ハルナ    じゃあ来年の誕生日もみんなでお祝いしようね

ミフユ    うん!楽しみー!!

チアキ    ちょっと!次の誕生日は私だからね?!ちゃんと覚えてる?!

ナツミ    えー?そうだったっけー?

チアキ    もう!ナツ姉ちゃん!!

ナツミ    うそうそ覚えてるよ、ちなみにアタシの誕生日は?

チアキ    そんなの覚えてないね!

ナツミ    あー!もう祝ってやんないもんねー!

チアキ    ナツ姉ちゃんになんて祝われなくてもいいもーん!べーっ!

ナツミ    カッチーン。こいつー!

ハルナ    ほらほらいつまで喧嘩してんの

チアキ    ナツ姉ちゃんが悪いもん!

ナツミ    はあ?アタシじゃないでしょ

ハルナ    ナツミ

ナツミ    何でよー

ハルナ    あんたもう高校生でしょ。小学生相手にムキにならないの

チアキ    ほら!やっぱりナツ姉ちゃんだって子供じゃーん!

 

               ナツミとチアキのバトルが始まる。

               ハルナが慌てて止める。

               ミフユがそれを眠そうながら少し楽しそうに見ている。

 

ハルナ    ミフユ、もう遅いから寝な?

ミフユ    え!プレゼントはー?!

ハルナ    プレゼントは朝起きてから

ミフユ    えー

ハルナ    えーじゃない。さっきまで眠そうにしてたくせに

ミフユ    んーー…

ハルナ    ミフユ

ミフユ    はーい

チアキ    え、ミフユもう寝ちゃうの?

ナツミ    当たり前でしょ、何時だと思ってんの

チアキ    えーー

ハルナ    チアキももう寝なさい

チアキ    眠くなーい

ナツミ    嘘つけ、さっきまで眠いって言ってたのに

チアキ    さっきはさっきだもん!ねえミフユ、お誕生日おめでとう

ナツミ    もう祝ったじゃん

チアキ    何回でも祝うよ!お誕生日おめでとうミフユ

ナツミ    寝ぼけてんなー

ハルナ    はあ、チアキ…

 

               ハルナが言いかけたところで、ミフユが突然立つ。

 

ミフユ    ねえ、ハッピーバースデー、歌ってよ!

チアキ    え?

ミフユ    ハッピーバースデー!ね、いいでしょチア姉ちゃん!ナツ姉ちゃんもハル姉ちゃんも!

ナツミ    ミフユは仕方ないなあ!

ハルナ    …ハッピバースデートゥーユー

 

               ハルナが歌い出し、次第にナツミとチアキも歌に加わる。

 

3人       ハッピーバースデーディアミフユー、ハッピーバースデートゥーユー!おめでとう!

ミフユ    ありがとう!

 

               ミフユ、中央の高いところにある台へ歩いて行く。

               照明がやや変化する。

 

ミフユ    ありがとう!おやすみ!

チアキ    ミフユ?

 

               ミフユ、下手の引き割の内側へ去る。

 

チアキ    どこ行くのミフユ、部屋はそっちじゃないよ

ナツミ    ミフユの部屋はあっちだよ

チアキ    え?

ナツミ    チアキは子供だから分かんないか

ハルナ    チアキ、もう寝なさい

チアキ    え?

ハルナ    ナツミも

ナツミ    うん、おやすみ

ハルナ    おやすみ

 

               ナツミ、上手に去る。

 

ハルナ    チアキ

チアキ    …うん……おやすみ

ハルナ    おやすみ

 

               チアキ、上手に去る。

               ハルナ 机の上を片付けて、下手(台所)へ去る。

               音楽 暗転

 

2 春休みのある日

               目覚ましの音が鳴る。ハルナが食卓の準備をしている。目覚ましが鳴り止まないので、呆れて上手に声をかける。

 

ハルナ    チアキー!起きろー!

 

               目覚ましが鳴り続ける。

 

ハルナ    チアキー!!チアキー!!!

 

               少しして目覚ましが止まる。また少ししてチアキが入ってくる。

 

チアキ    おはよ……

ハルナ    ……今何時だと思ってんの

チアキ……昼

ハルナ    そう。中学卒業してから、生活習慣乱れすぎじゃない?ほら、お昼できたよ

チアキ……ありがと

ハルナ    全く、目覚まし何回鳴ったと思ってんの

チアキ……わかんない

ハルナ    あんた8時にセットしてたでしょ

チアキ……かも

ハルナ    ずっとうるさかったんだから

チアキ    ……ごめん

 

               二人、食卓につく。

 

ハルナ    いただきます

チアキ    ……いただきます

 

               二人、残り物の食事

 

ハルナ    あんた、ご飯食べ終わったら着替えなさいよ

チアキ    ……どこも行かないよ

ハルナ    そういう問題じゃないの

チアキ    ……

ハルナ    分かった?

チアキ    …んー

ハルナ    返事は「はい」でしょ

チアキ    ……はい

 

               また食事が続く。

 

チアキ……ナツ姉ちゃん、いつ帰ってくんの

ハルナ    さあ。夜ご飯はうちで食べるって言ってたよ

チアキ    ふーん

ハルナ    嫌そうな顔しない

チアキ    だってあんま好きじゃないし

ハルナ    そんなことわかってるよ

チアキ    ハル姉ちゃんは、ナツ姉ちゃんが妹だからわかんないの

ハルナ    何がそんな嫌なの

チアキ    自分が偉いと思ってるとこ

ハルナ    まあね

チアキ    それに、押しが強くて、絶対自分を曲げなくて、一言でいえば「夜郎自大(やろうじだい)」なとこ。

ハルナ    難しい言葉知ってるね。

チアキ    ネットで見た。

               夜郎自大:自分の力量を知らない人間が、仲間うちで大きな顔をしていい気になっていること。

ハルナ    似てるね。

チアキ    誰に?

ハルナ    ううん。何にも。

チアキ    それにいつもうるさいし

ハルナ    賑やかでいいじゃん

チアキ    あと……ミフユのこと

ハルナ    ……

 

               間。

 

チアキ    ……ごちそうさま

ハルナ    もういいの?

チアキ    お腹空いてない

ハルナ    こんな時間まで寝てるから

チアキ    違うよ、最近食欲ないの

ハルナ    ふーん。体調悪い?

チアキ    別に

 

               ハルナ、チアキのおでこに手を置く。

 

ハルナ    うーん、熱はないけど

チアキ    ……今日、変な夢見た

ハルナ    夢?

チアキ    うん……なんか、忘れちゃったみたい

ハルナ    夢の内容?

チアキ    …なのかな

ハルナ    何それ

チアキ    ……着替えてくる

 

               チアキ、食器を片し、上手へ去る。

               ハルナ、食事を続ける。

 

ハルナ    ごちそうさま

 

               ハルナ、食器を片付けていると、インターホンが鳴る。

 

ハルナ    はーい

 

               ハルナが下手へ去る。

 

 

3 ナツミ

               下手からハルナとナツミが入ってくる。ナツミは派手な格好に濃いメイク。(間に合うか?)

               ただいま、と言いながら荷物を床に置いて、ソファーにダイブ。

               ぬいぐるみをいじったりして、周りを見渡す。

 

ナツミ    うわー!変わってないねー!!

ハルナ    思ったより早かったね

ナツミ    うん!ピエールも出かけるからって、追い出されちゃって。

ハルナ    ピエールくんちに泊ってたの?

ナツミ    そ、アパート

ハルナ    迷惑かけなかった?

ナツミ    大丈夫。あいつもいろいろ話したかったみたいでさ。

ハルナ    荷物置いてきたら?あんたの部屋そのままにしてあるから。

ナツミ    サンキュー!置いてくる!

 

               ナツミ荷物を抱えて上手へ去る。が、去り切る前に戻ってくる。

 

ナツミ    あ!お腹空いた!なんかない?

ハルナ    昼の残りならあるよ。食べる?

ナツミ    うん!よろしくー!

 

               ナツミ上手へ去る。ハルナ、台所から昼ごはんを持ってくる。

               ナツミが戻ってくる。

 

ナツミ    アタシの部屋、何も変わってなかった!

ハルナ    そりゃそうでしょ、何も変えてないんだから

ナツミ    いやなんかさー!もっと埃溜まったりしてるかと思った!あ!ご飯!ありがと!

ハルナ    ちゃんと掃除してるからね

ナツミ    姉ちゃんが?

ハルナ    チアキが

ナツミ    え、あのチアキが!

ハルナ    そう。自分の部屋掃除するついでにしてもらったの?

ナツミ    へえ、そうなんだ。尊敬するお姉ちゃんの部屋を掃除してやろうってわけか。

ハルナ    ではないと思うけど。

ナツミ    お姉ちゃん、仕事どう?忙しい?

ハルナ    うん、まあね。

ナツミ    給料はどう?

ハルナ    そこそこかな。お父さんが、仕送りを送ってくれるから何とかなってるよ。

ナツミ    そっか。あーあ、お父さん今頃イスタンブールか。向こうの空ってどんな色してるんだろ。

ハルナ    色は日本と変わらないと思うけど。

 

               ナツミ、庄野真代「飛んでイスタンブール」のサビを歌う。

 

ハルナ    何、その曲

ナツミ    「飛んでイスタンブール」。知らない?

ハルナ    いつの歌?

ナツミ    わかんない。

ハルナ    どこで覚えたんだか…

ナツミ    …ねえ、お姉ちゃん。

ハルナ    何?

ナツミ    今日、大事な日だからさ、お父さんも帰ってこれたらよかったのにね。

ハルナ    流石に難しいんじゃない?

ナツミ    正月帰ってたんだっけ?

ハルナ    うん

ナツミ    元気だった?

ハルナ    もうすっごい元気。あの人見た目だけおじいちゃんになってて、中身何にも変わんないんだもん!

ナツミ    だよねだよね、逆コナンみたいな

ハルナ    見た目はオヤジ、中身は子供?嫌なんだけど普通に

ナツミ    それなー!まあ元気ならいいや!ん!これウマっ!姉ちゃん、これいけるよ。

ハルナ    (ぼそっと)話コロコロ変えるとこ、…変わんないね

ナツミ    ん?

ハルナ    いや、いつ会ってもあんたは元気でいいね

ナツミ    まあーそれが取り柄だからね!この前バイトの面接でも言ったよ?アタシの取り柄は元気なところです!って

ハルナ    で、受かったの?

ナツミ    そりゃ勿論!このコミュ力おばけをなめるでないぞー!

ハルナ    面接ってコミュ力じゃないと思うけど

ナツミ    いやいや、もう姿勢とかもね、ピンって!第一印象大事って言うじゃん?だからね、顔見えるように前髪全部分けて、背筋ピンっ!笑顔ニカッ!これよ!これで大抵のバイト受かる

ハルナ    どうかなあ。てか、あんた面接にもその顔で行ったの?

ナツミ    ん?どういうこと?

ハルナ    メイク。ちょっと濃いんじゃない?

ナツミ    あー!これは大丈夫!面接の時はちゃんとナチュラルメイクってのしてるから!

ハルナ    本当に?ならいいけど

ナツミ    あったりまえじゃん!その辺抜かりないよ?姉ちゃんの妹だからね!あ、てかチアキは部屋?いるんでしょ?

ハルナ    ああ、うん

ナツミ    サプライズで行っちゃおうかな。部屋入って、後ろからぎゅ、って

ハルナ    それ、怒ると思うよ。

ナツミ    そうかなあ!?あ!これ冷たくなってる!

ハルナ    あんたが喋ってばっかで食べないからでしょ?

ナツミ    冷たくても美味しいよ!おいしいなあ!姉ちゃんのスープ!

ハルナ    それもチアキが作ったんだよ。

ナツミ    え!

ハルナ    そりゃ、作るでしょ。もう来月16なんだから。

ナツミ    大人になったなあ。

ハルナ    だから…分かってるよね。

ナツミ    うん。あ!ヤバい漏れる!!姉ちゃんトイレ!

ハルナ    はーい。

 

               ナツミ、上手へ消える。

               入れ替わるようにして、着替えたチアキがやってくる。

 

チアキ    ねえ!ハル姉ちゃん!!

ハルナ    どうしたの?

チアキ    もしかしてもうナツ姉ちゃん帰って来た?!

ハルナ    気づいた?

チアキ    やっぱり?!さっき部屋出る時、音がしたから。早くない?!

ハルナ    友達の部屋追い出されたみたいよ。

チアキ    何それ!

ハルナ    いいじゃん別に、早く来たって。

チアキ    良くないよ!まだ会うつもりじゃ無かったのに!

ハルナ    どうせ会うんだから

チアキ    心の準備!

ハルナ    家族と会うのに心の準備?

チアキ    家族とか関係ないし

ハルナ    はあー

チアキ    …何

ハルナ    いや、言ったら怒るでしょ

チアキ    怒んないよ、子供じゃないもん

ハルナ    本当に?

チアキ   

ハルナ    いや、似てるなって。2人

チアキ    はあ?私とナツ姉ちゃんが?

ハルナ    そう

チアキ    心外!こんな不名誉なことないよ!似てないし!

ハルナ    そういうとこ

チアキ    意味わかんない!

ハルナ    家族だからね、似るんだよやっぱり

チアキ    関係ないね!ナツ姉ちゃんなんてほぼ一緒にいないもん

ハルナ    覚えてないの?あんた小さい時ずーっとナツミの後ろついてまわってたよ?

チアキ    嘘だね!てか、だとしてもミフユ生まれてからは、私ずっとミフユと一緒だったし!ならナツ姉ちゃんよりミフユと似るはずじゃん?

ハルナ    …それもそうだね

チアキ    てか、お昼まだ片付けてなかったの

ハルナ    いや、片付けてたんだけど、ナツミがお腹空いたって言うから

チアキ    ああ

ハルナ    まあこの時間に来たってことは、お昼食べれてないんじゃないかなって思って?

チアキ    ふーん

 

               上手からドタドタと足音が聞こえる。

 

チアキ    げっ

ハルナ    変わんないなあ、あいつ

 

               ナツミが入ってくる。

 

ナツミ    あー!チアキいたー!!たっだいまー!チアキの大好きなナツ姉ちゃんが帰ってきたぞー!!

チアキ    ……

ナツミ    お、元気ないねえ!どうした?!失恋か?!

チアキ    ……

ナツミ    まあまあナツ姉ちゃんに話してみなって!アタシ、大学で拗れた恋愛学んでるから!

ハルナ    あんたまだそんなことしてんの

ナツミ    好きでしてんじゃないもん

ハルナ    今の彼氏は?

ナツミ    えっ聞いてよ!今の彼氏ちょーイケメンだよ?!

ハルナ    またそんなこと言って。今度はどんな顔よ

ナツミ    んー、聖徳太子と杉田玄白を足して2で割って豊臣秀吉混ぜた感じかな?

ハルナ    どういう感じそれ

ナツミ    とにかくかっこいいのこれが!

ハルナ    それが?あんた前に付き合ってたのもそんな感じじゃ無かった?

ナツミ    えー全然違うよ!前に付き合ってたのは、瀧廉太郎とチンギス=ハンを足して2で割ってザビエル振りかけた感じ!

ハルナ    ごめんわからない

ナツミ    いやー、やっぱ顔は大事だよねー!!

ハルナ    そんなだから変なのにばっか捕まるんじゃないの

ナツミ    うーん、恋愛難しいよね、好きになった人がまさかまだお母さんとお風呂入ってるとか思わないじゃん?

ハルナ    今の彼氏は大丈夫なの

ナツミ    周りからはやめとけって言われてんだけどさー。なんか四股して刺されたことあるらしい

ハルナ    ダメじゃん

ナツミ    でもそんな人に見えないんだもーん。それにスタイルいいよ?身長高いの!ほら、大事でしょ?!

               185はあると思う!

ハルナ    へえ、すごいじゃん

ナツミ    でしょでしょ!でもねー、お家デートとかしてくれないの、外出ばっかり!なんでだと思う?

ハルナ    ええ…なんか心当たりないの?

ナツミ    分かんない!聞いてみたんだけどね、靴脱いでるとこ見られたくないからってその一点張りで

ハルナ    あー…

ナツミ    もっと上手い言い訳使えよ!って感じだよねほんと!

ハルナ    多分いい訳じゃないと思うけど…

ナツミ    え!どういうこと?!姉ちゃん分かるの?!

ハルナ    本人から聞いた方がいいと思う…

ナツミ    えー何それ!分かったなら教えてくれればいいのにー!ね、チアキは分かった?!

チアキ    ……

ナツミ    チアキ?

チアキ    …………部屋戻る

ナツミ    え!何でよチアキー!せっかくこのナツ姉ちゃんが帰ってきてあげたのに!

チアキ    …自意識過剰

ナツミ    ガーーン!あ!分かった!照れてるんだなコノヤロー!可愛いやつめ!

チアキ    うざい

ナツミ    おっ反抗期かあ?お年頃だもんね

チアキ    そういうのいいって

ナツミ    遠慮するなよおー

チアキ    ねえほんとにうざい!

ハルナ    チアキ

チアキ    ……部屋戻る

 

               チアキ、上手へ去る。

 

ナツミ    ありゃりゃ

ハルナ    ナーツーミー?

ナツミ    アタシー?

ハルナ    あんたも悪かったよさっきのは

ナツミ    ちぇー

ハルナ    全く

ナツミ    ……はあー!ご飯食べる気なくなっちゃったな、ごめんね姉ちゃん

ハルナ    …いいけど、あとで仲直りしなさいよ

ナツミ    はーい

 

               ナツミ、食器を片付ける。

 

ナツミ    …チアキ、怒ったかな

ハルナ    怒ってたでしょ、どう見ても

ナツミ    …だよね

ハルナ    あんたが一方的すぎんの

ナツミ    …学校、うまくいってた?

ハルナ    うん、いろいろあったけど、無事卒業。

ナツミ    そっか…

ハルナ    一応、3年生は毎日行ってたからね

ナツミ    …よかった、行けてたんだ

ハルナ    ……うん。でも、半日で、保健室登校だった

ナツミ    そっか…

ハルナ    やっぱり、ミフユと一緒にいたいって。本当はね、登校もしないで、ずっと一緒がいいって言ってたんだけど、流石にさ

ナツミ    …うん

ハルナ    小学校も、ちゃんと行けてないから…せめて中学まではって思ってね

ナツミ    ごめん、大変なのに

ハルナ    いいよ、気にしないで

ナツミ    ありがとう。でも、じゃあ卒業式は出れた?

ハルナ    一応

ナツミ    見たかったな

ハルナ    あとで写真見る?

ナツミ    え!見る

ハルナ    あとでね

ナツミ    うん!…そうだ、あの………ミフユは

ハルナ    …チアキの、隣の部屋

ナツミ    ……変わってない?

ハルナ    …うん

ナツミ    だろうと思った、椅子4つあるし

ハルナ    …ごめんね

ナツミ    姉ちゃん悪くないよ。一人じゃ言いにくいだろうし。

ハルナ    うん

ナツミ    明日、何時ごろ出るの

ハルナ    お昼食べたらかな。温泉入って帰ってこようよ

ナツミ    いいね、賛成

ハルナ    ナツミ、疲れたでしょ

ナツミ    疲れた

ハルナ    …………今夜も、起きてるって

ナツミ    チアキ?

ハルナ    うん、明日でしょ?

ナツミ    ……今日中に言おうね

ハルナ    …そのつもり

ナツミ    ……チアキ、出てくるかな

ハルナ    どうかな……紅茶、淹れたら飲む?

ナツミ    飲む。あ、そういえばお菓子あるよ

ハルナ    お菓子?

ナツミ    そりゃ久々の帰省なんだからお土産くらいあるよ

ハルナ    へー、大人じゃん

ナツミ    大学生だからね

ハルナ    流石。じゃあ紅茶淹れてるから、チアキ呼んできてくれる?

ナツミ    ……うん

 

               ハルナ、紅茶を淹れる。ナツミ、上手に去る。

 

 

4 仲直り

               ハルナが奥で紅茶を淹れている。舞台前上手からナツミが出てくる。

               手にはお土産を持っている。チアキの部屋の前らしい。

 

ナツミ    ……チアキ

 

               間。

 

ナツミ    ……チアキ、居る?

 

               舞台前下手からチアキが出てくる。2人の間には壁があるらしい。

 

ナツミ    チアキ、あの……さっきはごめんね

チアキ    ……

ナツミ    姉ちゃんがさ、紅茶淹れてるよ、一緒に飲もう

チアキ    ……

ナツミ    アタシのお土産もあるよ、食べよ

チアキ    ……

ナツミ    …怒ってる?

チアキ    ……別に、ナツ姉ちゃんはいつもあんなだから

ナツミ    あはは、ごめんね、こんなお姉ちゃんで

チアキ    ……今更

ナツミ    だよねー…

チアキ    ……

ナツミ    …チアキ、出てきてよ

チアキ    …何でそんなに構うの?

ナツミ    チアキが好きだから

チアキ    私は好きじゃない

ナツミ    ぽいね…でも、家族じゃん

チアキ    ……関係ないよ

ナツミ    関係ないことないでしょ

チアキ    ………私、忘れてないからね

ナツミ    何を?

チアキ    …気持ち悪いって言った、私のこと

ナツミ    …アタシが?

チアキ    うん

ナツミ    …いつ

チアキ    ………ミフユのこと

ナツミ    ……

チアキ    まだ思ってるんでしょ

ナツミ    …チアキ

チアキ    ミフユも家族だよ

ナツミ    …チアキ

チアキ    ……

ナツミ    …チアキ、出てきて

チアキ   

ナツミ    顔見て話したいよ

チアキ    …………

 

               ナツミ、様子を伺うが出てこないので、諦めて上手へ去る。

               照明が元に戻る。ナツミが上手からハルナのいるキッチンに出てくる。

               チアキは部屋で膝を抱えたまま動かない。

 

ハルナ    あれ、チアキは?

ナツミ    ダメだった

ハルナ    そっかー、もうチアキの分も淹れちゃったよ

ナツミ    最悪アタシが飲む。ありがとう姉ちゃん

ハルナ    うん

 

               2人、席につく。

 

ナツミ    はい、お土産

ハルナ    えー!すごい、美味しそう

ナツミ    でしょ

ハルナ    ありがとう

ナツミ    うん

 

               照明は一人のチアキを映す。2人は奥で紅茶を飲んだりお土産を食べたりしながら話している。

               チアキ、何かを決心したように上手へ歩き始める。

 

5 紅茶

               チアキがキッチンに入ってくる。

 

ハルナ    あ・・・。チアキの分も紅茶淹れちゃってたんだ、飲む?

チアキ    ………うん

 

               チアキが席につく。

 

ナツミ    はい、チアキ。お土産

チアキ    ……うん

ハルナ    それすっごい美味しかったよ

ナツミ    お、姉ちゃん気に入った?

ハルナ    うん、また買ってきてよ

ナツミ    いいよ、覚えてたらね

ハルナ    それ忘れるパターンじゃん

ナツミ    えー、じゃあ食べたくなったらLINEしてよ

ハルナ    何、そしたら送ってくれるの?

ナツミ    気分による

ハルナ    やっぱ送らないじゃん

ナツミ    分かった、次帰ってくる時、絶対に買ってくるから

ハルナ    楽しみにしてるよ?

ナツミ    ウン

チアキ    ねえ、何?

ハルナ    え?

チアキ    ナツ姉ちゃん、話したいって言ったじゃん、何?

ナツミ    ああ、それなんだけどさ……あー、姉ちゃんから聞いたよ?学校のこと

チアキ    え…?

ナツミ    ……高校も、どこも受けてないんでしょ?

チアキ    …ナツ姉ちゃんに、関係ないでしょ

ナツミ    そんなことないよ、心配してるんだから

チアキ    ……

ナツミ    なんか、やりたいこととかさ

チアキ    ない

ナツミ    何もないってことないでしょ?

チアキ    ないよ

ナツミ    でも、どうするの?中学卒業して

チアキ    ……

ナツミ    高校行かないで、じゃあ就職?できるの?

チアキ    ……ミフユと一緒にいる

ナツミ    そんなの

チアキ    ミフユは、まだ外も行けないから。私がミフユのお世話する。

               ミフユと一番近いお姉ちゃんだし、一番近くで支える、支えてた、これまでも。

               だから、これからもそうする。だから高校は行かないし、就職もしない

ナツミ    ずっとそうするの?

チアキ    わかんない、それはミフユ次第だから

ナツミ    ……

チアキ    てか、話したかったことってこれ?部屋戻っていい?

ハルナ    え、紅茶は?まだ残ってるよ

チアキ    ごめん、もういい

 

               チアキ、上手へ去ろうとする。

 

ナツミ    待ってチアキ!

チアキ    ……何?

ナツミ    ごめん、話したかったこと、本当は、こんなんじゃなくて…

チアキ    ……

ナツミ    えっと……

チアキ    ……ナツ姉ちゃん、まだミフユのこと嫌いなんでしょ。私がミフユと仲良くしてるの、そんなに嫌?

ナツミ    そういうわけじゃ

チアキ    じゃあ何?

ナツミ    ……

チアキ    …何でミフユのこと嫌いなの?

ナツミ    ……ねえ、チアキ、ミフユ、ここに呼んできてくれる?

チアキ    …え?

ナツミ    アタシ、ミフユとも会いたいなー!ほら、本当は一月帰ってくる予定だったけど、体調崩して無理だったじゃん?それでこんな、春休みになっちゃってさ!もう我が愛しき妹たちに会いたくて仕方なかったんだー!だから、ね?チアキ

チアキ    …ミフユのこと、嫌いって、言ってたじゃん

ナツミ    言ったっけ?そんなこと

チアキ    言ったよ!覚えてないの?「ミフユってばずっと部屋に籠ってて気持ち悪い!(途中からナツミが被せる)」

 

               舞台が少し暗くなる。

 

ナツミ    幽霊みたい!もうアタシ、ミフユの顔も思い出せないなー!

ハルナ    ナツミ…?

チアキ    ナツ姉ちゃん?

ナツミ    ねえ、チアキってばいつまでミフユと仲良くしてるの?もうそろそろ気持ち悪いんだけど

チアキ    …え?

ナツミ    正直怖くない?ミフユ

チアキ    …急に、どうしたの

ナツミ    急じゃないよ、ずっと思ってた。ずっとミフユが嫌いだったよ

チアキ    え……な、何で?

ナツミ    何で?こっちのセリフだよ。逆に何でチアキはミフユと仲良くできるの?

チアキ    だって……家族じゃん!家族なんだから、ミフユ、頑張ってるし、外、出ようって、なのに、そんなこと言わないでよ…

ナツミ    ……家族、家族ねえ。家族とか関係ある?だってミフユは

ハルナ    ナツミ!!

ナツミ    …………ごめん

 

               照明が元に戻る。

 

ナツミ    あの時は、アタシまだ子供で……でももう思ってないよ?だから、ミフユに会わせて

チアキ    ……声、かけてみるけど…多分、来ないよ

ナツミ    うん、ありがとう

 

               チアキ、上手へ去る。

 

ハルナ    ナツミ…

ナツミ    ……どうしよう、姉ちゃん

ハルナ    ……

ナツミ    …あいつ、優しいね

ハルナ    …うん

ナツミ    …言えない

ハルナ    …うん

ナツミ    …もう、言えない

ハルナ    ……私が言うよ

ナツミ    でも…

ハルナ    お姉ちゃんだもん、任せて。それに、約束でしょ。今日絶対言うって。

ナツミ    …うん

 

               チアキが戻ってくる。

 

ナツミ    チアキ

チアキ   

ナツミ    やっぱり、無理そう?

チアキ    うん

ナツミ    そっか……ねえ、ミフユ、変わった?

チアキ    …全然、変わってない。…あ、でも最近、ミフユ、絵描くようになったんだよ。

ナツミ    絵?

チアキ    うん、もうミフユってばずーっと絵描いてるの。お母さんに似たんだろうなあ、お母さん、絵好きだったよね?

ナツミ    うん。ミフユの絵、見たいな

チアキ    いや、私にも見せてくれない。なんか素っ気ないんだよねー、反抗期かな?

ナツミ    チアキと一緒じゃん

チアキ    私別に反抗期とかじゃないし!

ナツミ    えー?どうだか

チアキ    何その言い方!

ハルナ    喧嘩しないの

ナツミ    喧嘩じゃないもーん。ね、チアキ?

チアキ    喧嘩だよ!ナツ姉ちゃんってばいっつも私のこと馬鹿にして!

ナツミ    馬鹿になんかしてないよ?

チアキ    でも下に見てるじゃん!

ナツミ    だって下だもん!アタシお姉ちゃんだよ?

チアキ    私よりちょっと早く産まれただけでしょ?

ハルナ    2人とも

ナツミ    …怒られたー

チアキ    ナツ姉ちゃんのせいだよ

ナツミ    アタシじゃないよ

ハルナ    ナツミ

ナツミ    ……

チアキ    ほら

ハルナ    チアキも

チアキ    ……

ハルナ    2人とももう子供じゃないんだから

ナツミ    はーい

ハルナ    はあ…あ、そうだチアキ。明日はお昼食べたら出かけるからね

チアキ    明日?

ナツミ    明日はお母さんのお墓参りの日でしょ。

ハルナ    帰りに温泉行くから、お風呂の用意もしといてね

チアキ    え、明日行くの?何で?

ハルナ    何でって…ナツミが帰って来てるから

ナツミ    そもそも、アタシそのために帰って来たんだよ?

チアキ    でも、だって……明日は、ミフユの誕生日でしょ?

 

               間。

 

ナツミ    …そうだね

チアキ    え、まさか2人とも忘れてたの?サイテー、ミフユかわいそー

ハルナ    忘れてないよ

チアキ    嘘、今言われて思い出したでしょ。だって2人とも顔に出やすいもん。分かるよ

ナツミ    忘れてない

チアキ    どうかなー。てか、忘れてなかったら忘れてなかったで、そっちの方が最低だからね?

ハルナ    …チアキ

チアキ    何?

ハルナ    ……明日、ミフユの誕生日だから、行くんだよ

 

               間。

 

チアキ    …え?…………何それ、最低じゃん。誕生日くらいみんなでうちでお祝いしようよ。ミフユ、出てこれないかもだけど、家に1人は可哀想だよ。てか、毎年そうしてたじゃん!あ、分かった。ナツ姉ちゃんああ言ってたけど、やっぱりミフユのこと嫌いなんでしょ?まさかハル姉ちゃんも?何で?確かに部屋に籠りっぱなしだけど、ミフユだって大事な家族じゃん!

ナツミ    ……

ハルナ    ……

チアキ    …え?…あ、図星?だから何も言えないんだ?お姉ちゃんたちがそんな酷い人たちだなんて思わなかったなー!私、結構ショックかも。いいよ、お姉ちゃんたちだけで行きなよ。私、ミフユといるから。ね、それでいいでしょ?

ナツミ    ……

ハルナ    ……だめ

チアキ    ……

ハルナ    チアキは、絶対一緒に来てもらうから

チアキ    嫌だ、何で?

ハルナ    ミフユの誕生日、みんなでお祝いしたいんでしょ?

チアキ    ずっとそう言ってるじゃん

ハルナ    ……ね、チアキ、覚えてる?ミフユが生まれた時のこと

チアキ    覚えてるよ、大変だったよね。お母さんが、なんか、体調崩して早めに入院しちゃってさ。入院する前、お母さんすっごい泣いてたよね。ごめんねー、ごめんねーってずっと謝ってて、それで……

ハルナ    それで…?

チアキ    それで、私、あの後…………灰色の大人の人たちが、いっぱいいて……お姉ちゃんたち、みんな、泣いてて……

 

               チアキ、突然立ち上がる。上手へ走り去る。

 

ナツミ    チアキ!

 

               ナツミ、追いかけようとする。が、ハルナに止められる。

 

ナツミ    …姉ちゃん

 

               ハルナ、壁に掛けてある絵の後ろから封筒を取り出す。

 

ナツミ    言うの?

ハルナ    約束、だからね

 

 

6 ミフユ

               チアキが走って戻ってくる。

 

チアキ    どうしよう!どうしよう!!ミフユが!ミフユがいない!!ねえお姉ちゃん!ミフユどこ行ったか知らない?!ここ通らないと玄関行けないはずなの!部屋の窓も鍵閉まってたし、ねえ!ハル姉ちゃん!ナツ姉ちゃん!ミフユどこ行っちゃったんだろ、ミフユ、ミフユ…!!

ハルナ    チアキ、チアキ落ち着いて

チアキ    何で?ミフユがいないんだよ?あの子、外なんて出たことないのに!どうしよう!どこかで泣いてないかな?!ねえナツ姉ちゃん!ナツ姉ちゃんは何か知らない?!

ナツミ    チアキ…

チアキ    きっと悲しくて逃げちゃったんだ、私たちの話聞いてたんだよ!ミフユは寂しがり屋だから、だから

ハルナ    チアキ!

チアキ    …何?

ハルナ    ……チアキ、ミフユ、何歳になるの?

チアキ    …え?

ハルナ    ミフユ、明日で何歳になるの?

チアキ    ミフユは……

 

               下手からミフユが出てくる。

 

ミフユ    ミフユ、0歳!

ナツミ    …ミフユ、変わった?(チアキに聞く)

チアキ    ミフユは……

ミフユ    ミフユ、変わんないよ!もう、変われない!

 

               ミフユが去る。

 

ハルナ    ……チアキ、ミフユ、何歳になるの?

チアキ    …………0歳

ハルナ    ……ずっと、言えなくて…ごめんね

チアキ    ……知ってたの?2人とも

ハルナ    ……知ってたよ

ナツミ    …ごめんね

ハルナ    チアキ、これ

 

               ハルナ、チアキに封筒を渡す。

 

チアキ    何、これ

ハルナ    手紙。お母さんから

チアキ    お母さんから…?

ハルナ    そう

 

               チアキ、封筒の中の手紙を読む。

 

チアキ……「チアキへ。中学校卒業おめでとう。

母(声のみ)           この手紙を読んでるということは、そういうことでしょう。大きくなった貴方を見られないのが、とても残念です。

               ミフユを産んでから、私は体調が優れなくて、私はきっと長くありません。

               チアキがいつもミフユと遊んだ話を聞かせに来てくれるのが、お母さんは嬉しいです。

               だけど、もし貴方がまだミフユと遊んでいるのなら、この事実を伝えなければいけません。

               ミフユは私のお腹の中で、私達と出会うことなく亡くなりました。

               ミフユを大切にしてくれてありがとう。

               でも、貴方は貴方の人生を歩むべきです。

               どうか、ミフユの分まで幸せになってください。

               お母さんはずっと見守っています。

               チアキのこと大好きだよ。母より」

ハルナ    ……明日、ミフユの誕生日、みんなでお祝いしよう

チアキ    ………ねえ、ミフユも、家族だよね

ハルナ    …ミフユも、私たちの大事な家族だよ

ナツミ    アタシたちも、ミフユのこと、大好きだよ

チアキ    ……そう、かな?

 

               チアキ、号泣。

               ハルナ、チアキを抱きしめる。その後ナツミも抱き寄せる。3人、泣く。

               下手からミフユが出てくる。

 

ミフユ    いいなあ

チアキ    …!(顔を上げる)

ナツミ    チアキ?

チアキ    …ミフユ?(2人から離れる)

ハルナ    え…?

ミフユ    流石だ、チア姉ちゃん。ミフユが分かるの?

チアキ    ミフユ、いるの?

ミフユ    うん、いるよ

チアキ    …寂しいの?

ミフユ    ……うん、寂しい。土の下は、冷たくて、寒くて、寂しい

チアキ    ミフユは寂しがり屋だからなあ

ミフユ    うん、ミフユは寂しがり屋だよ

チアキ    ミフユ、おいで

ミフユ    …いいの?

チアキ    ミフユも、私の大事な家族だよ

ミフユ    ……うん!

 

               ミフユ、チアキに抱きつく。

 

チアキ    大きくなったね、ミフユ

ミフユ    本当に?ミフユ、大きくなった?

チアキ    うん、大きくなった

ミフユ    ミフユ、大きくなれるの?

チアキ    勿論!ミフユには、無限の可能性があるんだよ

ミフユ    何それ!すごそう!

チアキ    そりゃすごいよ!このチア姉ちゃんの妹なんだから!

ミフユ    えー、それってチア姉ちゃんは超えれないってこと?

チアキ    私を超えたいの?そんなの、100年早いね!

ミフユ    そんな大袈裟なー!そうだ、チア姉ちゃん!ハッピーバースデー歌ってよ!

チアキ    え?

ミフユ    ハッピーバースデー!

チアキ    誕生日は明日だよ?

ミフユ    えーいいじゃん!ほら、ハル姉ちゃんも、ナツ姉ちゃんも!

ナツミ    …ミフユは仕方ないなあ!

ハルナ    …ハッピーバースデートゥーユー

 

               ハルナが歌い出すと、2人も歌い出す。

               3人の歌に、ミフユも加わって、全員でハッピーバースデーを歌う。

              

全員       ハッピーバースデーディアミフユー、ハッピバースデートゥーユー!おめでとう!

ミフユ    ありがとう!

 

音楽「シャボン玉」が流れる。