創作脚本提案用紙 日時:2016年5月28日 提案者:久保山ワタル

タイトル: ビニギャル〜あるコンビニの小さな物語〜

一言で言うと: 女子中学生が国立高専に合格しようとして、コンビニで勉強する。夜間バイトのフリーター青年が、その中学生との交流や店長、お客さんとの交流の中で、春に再びスタートを切ろうと決意する。

テーマは… 人は対話をし、他者の世界を知ることで、自分の壁を乗り越えていくことができる。

 勉強の機会が失われた子どもたちのいるこの世界を変えて行こうよ。

時・場所: 現代、地方都市の郊外の住宅街にあるコンビニとそのイートイン

登場人物: 

@コンビニ夜間バイト:川合マコト

公立高校進学校中退の18歳。父は銀行員、母は専業主婦で、勉強に関して厳格な家庭で育つ。ある日、人間関係のつまずきをきっかけに学校に行けなくなり、勉強の意味も分からなくなり学校をやめる。以後家でぶらぶらしていたものの、少しずつ社会に出ていかないといけないと感じ、コンビニの夜勤バイトを始める。

Aビニギャル:周防ハルカ 

中学3年生。小学校高学年から周りの同級生の女の子たちと気が合わず、家庭も両親の中が悪くなり、夜に外で遊ぶようになった荒れた中学時代を過ごす。腹が据わっているが、怒るとカッとなる部分もある。暴走事件で逮捕され知り合った保護司さんに才能を見いだされ、受験してみたらと言われて変わり始める。結局自立した人間になるためには、学歴が必要と、5年間の学費が安く寮もある国立高専を目指すことになる。家は父親と二人暮らしだが、父親は長距離トラックの運転手で家にはほとんどいず、帰ってきたら酒を飲んで家事を全くしないので、家がぐちゃぐちゃで臭い状態。母親は弟と共に離れた町にいる。母親には一緒に住む男がいて、その男が嫌で母親の所に行くこともできない。携帯は持っているが、通信制限にかからないため、フリーWiFiのあるコンビニで勉強するようになる。

B店長: 

 40歳の直営店店長。社会人経験があり、転職で現在の職業に。結婚していて子どもが1人いる。仕事には厳しいが、自分も母子家庭で、母親の働く後ろ姿を見て育ったので、ハルカの立場もよく分かる人物である。

C客・サラリーマン: 

 24歳の商社に勤めるサラリーマン。小さな商社に勤めているが、残業で帰るのは遅く、いつもコンビニによってビールを買っていく。飲んで帰ってきて、翌朝の朝食を買ったりすることも多い。

 自分が勤めている会社がブラックで不信感を持ち、転職なども考えたりしているが、なかなか思い切れない。

状況: 11月から3月上旬

ストーリー

起:コンビニでバイトするマコトとコンビニで勉強する女子中学生がいる。

 舞台は住宅街の夜のコンビニ。お客さんをテキパキと処理するマコト。奥から店長が見ている。

 マコトと店長との会話。マコトは学校をやめて9か月、コンビニに入って3か月。マコトは人見知り、昼夜逆転から回復途中。夜間なら人が少ないからと、店長に誘われ、初めて夜勤(22時〜6時)を勤める。夜勤の間は、店長は自宅に帰る。夜勤のもう一人の相方もいるが劇には出てこない。

 店長、マコトに初夜勤の注意事項を告げる。ボージョレヌーボーの「声掛け」と「自腹買い」。店長がイートインの女子中学生(ハルカ)を気にする。コンビニに配達人が来て、マコトとの会話。

承:マコトのピンチをハルカが救い、二人は話をするようになる。ハルカは酔っぱらいとトラブルが起こるが、結局12時までコンビニで勉強していくことになる。

 マコトが女子中学生に家に帰るよう話しかけるが女子中学生は無視。お客が入ってきてマコトは業務に戻る。マコトと常連客の日常。酔っぱらったサラリーマンがタバコの件で絡まれ委縮するマコト。動揺してマコトがお客さんの弁当を温めたところ、電子レンジ内で爆発が起こる。うっかりソースを温めたみたいで、弁当はぐちゃぐちゃ。お客さんにお出しできない。そんな時に電子レンジを使いたいお客さんが並ぶ。もう一人のバイトは外の掃除に出かけたみたいでいない。そんな時、女子中学生がすっとレジに入ってきて、電子レンジの掃除を始める。マコトに的確な指示を出し、お客を流す。

ピンチのところを女子中学生に助けられ、お礼を言おうというマコトに中学生はコーヒーを要求。それをきっかけに女子中学生の名前がハルカと分かる。ハルカの家はとても勉強できるような状況じゃないらしい。ハルカが問題を聞いてくる。中1の数学の問題らしいが、いきなり聞かれて戸惑うマコト。納品の業者が来て中断。ハルカはため息をついて、テキストに戻る。

 次の夜、やはりハルカがイートインで勉強している。弁当の廃棄の話。酔っぱらいが入ってきて、中学生と分かって帰るように説教をするが、ハルカは飲酒禁止を逆に指摘、酔っぱらいは怒って「ガキは塾へ行け」「家でやれ」。ハルカが反撃「あんな家で勉強なんかできるか。どこでやれっていうんだ」と反撃。マコトが止めようとする。結局、ハルカは怒って荷物をまとめて出ていく。

次のマコトの当番の日。この日は店長と店番をしている。ハルカは勉強している。12時になったら、ハルカが荷物をまとめて店長に礼をして帰っていく。マコトが理由を尋ねると、「12時まで許可した」と言う話。店長自身も進学の際の借金などで苦労したらしい。ハルカに勉強させるのに「娘」と偽っている話。

転:コンビニの常連客にも応援されていくハルカにマコトは自分が変わらなければいけないことを感じる。受験が迫ったある日、突然コンビニからハルカの姿が消える。

 ある夜、ハルカがマスコットをつけている。どうしたのかと聞くと、友達にもらったという話。学校で勉強するようになってから、友達ができたという。関数の話。YfX)で、Xに何かを入れたら、Yが分かるという話に感動したという話。マコトは最初、その話の意味が分からないが、必死で分かろうとする。ハルカが初めてマコトがどうして深夜バイトをしているか聞いてくる。答えられないうちに、お客が来てマコトは仕事に戻る。あの時の酔っぱらいがくる。ハルカにジュースを1本置いて、「がんばれよ」と声をかけて帰っていく。どうしたのと聞くと、「分からない」とのこと。みんな少しずつ変わっていく。

 劇中劇。ハルカが合格したと、店に入ってくる。マコトは喜んで迎える。マコトがハルカに「僕と付き合ってください」と頼むが、フリーターじゃちょっとね、と断る。そこで、配送の人が入ってきて、夢から覚めて終了。マコトは夜明けの近い時間に居眠りをしていたのだ。

 入試まであと3日と迫った日。マコトが店に当番で入るとハルカがいない。がらんとするイートイン。忘れ物を取りに来た店長の話では、お母さんが離れた町から迎えに来たらしい。マコトはメアドも携帯番号も聞いていない。常連の客もやってきて尋ねるが、「うまくいくといいね」と帰っていく。

 入試日の2日後、ハルカから手紙が届いたと店長に教えられる。今、母親の元にしばらくいること。予定通り高専を受けたこと。コンビニにまつわる人たちに感謝していること。合格発表を見に行くこと。最後に電話番号が書いてあった。その手紙を読んで泣くマコト。マコトは「自分みたいな人間を頼りにしてくれるから」と言う。その言葉に店長は「君は頼りない人間なんかじゃない。頼れない人間だったら、君を採用していない」ことを告げる。勤務が始まるまであと5分、それまでに電話して来いと告げる。

結:コンビニでの日常が終わる最後の日。マコトはハルカに勇気を持って声をかける。

 コンビニのイートインでハルカが勉強している。時計を見て、帰り支度を始め、翌日のためのパンを買う。いよいよ明日は公立高校の入試。高専は補欠合格で微妙な結果に。ハルカにとってもコンビニで勉強する最後の日。去りかけるハルカに、マコトは来年はコンビニの夜のバイトはやめて、予備校へ行き大学を目指すことを決めたと告げる。マコトは「受験終ったら行きたいとこない?」と聞く。「返事は、受験の後でいい?」とハルカが答えて、コンビニを去る。すれ違いざまに常連客が入ってきて、ハルカとすれ違いに応援の言葉をかける。いつものたばこを素早く出して、お客さんに応対して幕。

 最後はスピッツの曲 (チェリーとか)?モンゴル800(小さな恋の歌)?

※この箱書きと実際の脚本はストーリーが異なります。あくまで参考としてください。