高校演劇おすすめ本

 よい劇をつくるためには、ちゃんとした演技についての考え方や裏方のやり方を知らなければならない。
そのためにも読んだほうがいい本だけを紹介していきます。
なお印は顧問が本の内容をまとめた要約がある本です。


  • 濡れた太陽 高校演劇の話 上下 前田司郎著 朝日新聞出版(2012)
     劇団「五反田団」主催の作者の、自伝的小説。
    あるブログに「小説なんだけど前田さんの演出論がいっぱい詰まってる」と書いてあったので読んでみたら、一気に読んでしまう。
    高校演劇を題材にした青春小説だった。
    高校演劇を作っている人たちが読むとたくさんの示唆があると思う。
     面白い脚本はかけないんだけど演劇が好きで唯一の部長をしている3年生の「妙子」が、自分の脚本を下級生たちが演じているんだけど違和感を持つシーン。

     作家はやっぱり台本を信じたい。信じるためには疑わないといけないのだが、疑う行為は信じることと相反するように思えてしまう。しかし、疑うことこそ信じることなのだ。
     疑い、それを解消していく作業が台本を書くって事には重要なのかもしれない。
     演劇にはたくさんの人間が関わっている。だからこの「信じる」ってことは重要なのだ。最終的には観客に信じてもらわないといけない。舞台上の人間が間違いを信じていたり、信じていなかったり、バラバラのものを信じていたりすると、観客は何を信じていいか判らなくなる。

     太陽が書いた脚本の練習をしている中で、妙子がセリフを太陽が指示している「普段みたいにしゃべる」ように言えないことに関して。

     演出家は信じることが仕事なのだ。太陽はそう信じ、自分に言い聞かせた。
     俳優を信じ、台本を信じるのだ。信じるためには疑わないといけないが、疑うのが目的になってはいけない。疑った結果がどうであろうと、最終的には信じるのでなくては駄目だ。
     これらのシーン以外にも、ひと言では言えないたくさんのいいシーンがある。
    長いので寝不足に注意して読んでみてください。

  • だれでも書けるシナリオ教室 岸川真著 芸術新聞社(2010)
     映画のシナリオの書き方の本だが、参考になりそう。
     まず、内的プロット=自分の知っている人物、体験、願望、感じることなど
     を
     外的プロット=映画の型(ホラー、アクション、サスペンス、パニックなどの決まりごと)
     に当てはめることが書かれている。
     そして著者自身の映画のシナリオ初稿を書くドキュメントもついている。
     著者の熱を感じる本。

  • スクリプトドクターの脚本教室 三宅隆太著 新書館(初級編2015)(中級編2016)
     スクリプトドクターとは、ハリウッドでは一般的な「脚本のお医者さん」
     著者の話は、まず「シナリオ学校」の生徒が陥りやすい脚本のパターンの紹介から始まる。
     初級編は「主人公を追い込む」「主人公が「殻」を破る瞬間が描かれる」「殻とは未精算の過去」「中心軌道=葛藤の流れ」とか、興味のある話が次々と出てきて一気に読んでしまう。
     また「分析評価シート」も参考になりそう。
     中級編は「偶然を意図的に取り込む方法」として「物語ひらめきドリル」が目を引く。
     OBの方にこの本を教えていただきました。
     この本を読んでおくのと、読んでおかないのとでは、脚本に対する姿勢や心構えが違うと思います。

  • 奇跡の演劇レッスン 兵藤友彦著 学芸みらい社(2015)
     著者は刈谷東高校演劇部顧問。
    不登校経験者の生徒が多い学校で、中部大会はおろか全国大会を何回も出場している。
    その先生の生徒への指導法、演劇の考え方、脚本に対する考え方などが書かれている。
    4本の先生の脚本も掲載され、読み応えがある。


    以上は2017年に記録したものです

  • シェイクスピアが笑うまで~中学生のための脚本創作法~ 志子田宣生著 晩成書房(2008)
     「ダブルはなこ」という中学生が書いた劇を題材に、中学生にも分かるように脚本の書き方を丁寧に書いた本。
     手順としては1書くものをつかむ 2人物をつくりあげる 3あらすじを作る 4劇の組み立てを考える 5脚本の形式で書く と言う順で説明する。
     実用的で高校演劇の創作に役立つ本である。

  • だれでも書けるコメディシナリオ教室 丸山智子著 芸術新聞社(2011)☆
     吉本新喜劇や、吉本の芸人を役者にして行う劇の脚本を書いてきた丸山さんが、コメディの書き方について詳細に書いた本。
     面白いアイデアが浮かんでもその場で「うまそう」と思って食べたり、他人に「食べろ」と強制せず、しっかりどう調理すればおいしくなるのか、みんなが喜んでくれるのか吟味せよ。など、実感に伴うアドバイスが豊富。
     実際に丸山さんの脚本で作られた劇のDVDもついている。  

  • 「物語」のつくり方入門7つのレッスン 円山夢久著 雷鳥社(2012) ☆
     物語の大まかな輪郭を作る。物語の流れを作る。キャラクターの考え方。主人公を作る…など7つのレッスンに分けて、物語の作り方が書かれている。
    元々は映画の脚本や小説などの物語を作るための本だと思うが、演劇の創作にも役に立つと思われる。

  • 9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方  福島文二郎著 中経出版 (2010) ☆
     ディズニーランドでアルバイトに応募してきた人に、先輩たちがどのように仕事を教えるかの心得が書かれた本です。
    後輩を指導する立場になった部員にとても役立つと思います。

  • 「爆笑コント入門〜受ける笑いの作り方全部教えます〜」元祖爆笑王著、リットーミュージック(2010)☆
     学園祭やいろんな場所で気軽にできる演劇部の出し物が「コント」。
    コントの構造を明らかにし、オリジナルのコントの作り方を具体的に記している本。
    コントが作ってみたくなる。


    以上は2015年に記録したものです

  • 「SAVE THE CATの法則〜本当に売れる脚本術〜」ブレイク・スナイダー著、菊池淳子訳(2010)☆
     ハリウッドで映画の脚本家として活躍した故ブレイク・スナイダー氏の「売れる脚本」を書くためのコツが詰まった本。演劇とは異なるが、ハリウッド映画がこんな考えで作られていたと分かる。たとえばタイトルの「SAVE THE CAT」って話も面白い。ほかに「ログライン」の話、「つかみ」の話、「ボード」の話、「プールで泳ぐローマ教皇」の話など。人間が見たいのは、「同じものだけど、違った奴」だと分かる。

  • 「中学校たのしい劇脚本集?〜?」 日本演劇教育連盟編 国土社(2010)
    2008年から2012年まで中学校の学園祭の演劇を指導したが、その際大変役に立った脚本集。どれも20〜45分の芝居で、斉藤俊雄先生や、河内尚和先生などその道のプロの書いた脚本が詰まっている。そのほかの芝居も中学生が学園祭で上演するのが楽しいものが多く収録されている。

  • 「幕が上がる」 平田オリザ 講談社(2012)
    高校演劇の審査員としてよくいらっしゃる平田オリザさんが書いた高校演劇の小説。小説としても「本屋大賞」的面白さがある上に、高校演劇部作りのノウハウが詰まっている。高校演劇に関わる人はぜひお読みください。

  • 「どんなストーリーでもかけてしまう本」仲村みなみ 言視舎(2012)☆
     ストーリーのタイプは4つしかない。自分のために動くか、他人のために動くか。自分の意志で動くか、巻き込まれて動くか。この4つのタイプに分類できちゃう、というのが主張の本。ストーリーというものは何なのか、そのほか話しのトッピング名として、バディ(相棒)がいる、ロードムービー形式、枷の設定などについて書かれている。創作脚本を作る際に読むとよいかも。〔2017年2月この本に当てはめて脚本作成〕

  • 「シナリオ錬金術〜ちょっとのコツですらすら書ける33のテクニック〜」浅田直亮 言視舎(2011)☆
     いろいろなドラマや映画の実際のストーリーを交えながら、シナリオを書く際にプロが使うテクニックが書いてある。キャラクター養成講座、展開力をつける講座、シーンとセリフを書く講座、発想を刺激するヒント、の4部構成。もともとテレビドラマのシナリオを書く人のものだが、いろいろと参考になる。

      以上は2014年に記録したものです。

  • 「ザ・スタッフ」伊藤弘成著(晩成書房)3,502円
     高校演劇の裏方の技術と精神論をこれほど分かりやすく多方面に書いた著作はなく、販売されてから10年間、版を重ね続けている。
     著者の伊藤弘成さんは東京の私立京華女子高校の演劇部の顧問の先生。舞台装置、照明、音響、メイク、小道具、稽古の進め方、小スペースを劇場に変える方法、本番直前の舞台監督のあり方などにいたるまでが書かれており、「分からないことがあったら、人に聞く前にザ・スタを見よ」と言われる。3,502円と値段もすごいが、内容に比べれば安い。

  • 「成井豊のワークショップ〜感情解放のためのレッスン」成井豊著(演劇ブック社)2,000円
     キャラメルボックスの脚本家で主宰者の成井豊が自分の考える「面白い演劇」を明らかにし、それにいたる役者の訓練法を書いた。彼の考える「感動できる演技」とは、台詞回しがうまいことではない。どれだけ自分の感情を解放できるかだという。そのための訓練法だけでなく、身体訓練や発声、演劇に不可欠なリズム感をアップするためのゲーム、脚本の読み方などにも触れている。(07年度、劇部全員購入の教科書に指定)

  • 「高校生のための実践劇作入門」北村想著(白水社)1,500円
     「まず、ペンネームを考えましょう」から始まる不思議で分かりやすい戯曲講座。これを読んでいると脚本を書いてみようという気になってくるから不思議。

  • 「演劇やろうよ!」かめおかゆみこ著(青弓社)1,800円
     現在「表現」や「コミュニケーション」をテーマにワークショップや講演で全国を飛び回っている著者が書いた、演劇の奨め。高校演劇に役立つプラニング、演出、劇作なども彼女なりにわかり易く書いていて、一読の価値あり。

  • 「I-note〜演技と劇作の実践ノート」高橋いさを著(論創社)2,000円
     劇団ショーマ主催の高橋いさをさんが書いた演技論、劇作論についての本。前半の演技編では、演劇の演出の際によく言われる言葉を彼なりにわかり易く翻訳し、素人にも分かるように説明している。演技力とは、芝居ごころとは、役作りとは、テンションの高い演技とは、表現力とは、空間構成とは、想像力とは、コンテクストとは、など。演技を志す人はぜひ読んで意識を高めてほしい。
     後半は劇作編。戯曲とは、キャラクターとは、二人芝居について、劇中劇の方法、ファンタジーの方法など。劇作をやってみたら、この本は高校生でも理解できると思う。一読をお勧めする。

  • 「演劇入門」平田オリザ著(講談社現代新書)660円
     タイトルは演劇入門といいながら、中身は平田オリザさんの演劇論と戯曲創作術である。演劇の中で「リアル」さを感じさせるためにはどうすればいいのか、戯曲の書き方とは、演劇におけるコンテクストとは、など。これを読んだから脚本を書けるとは限らないが、演劇への理解を深めてくれる本であると感じた。続編の「演技と演出」(講談社現代新書)も氏の演出論がよく分かる好著。

  • 「実践演劇講座04戯曲創作」飯島光孝著660円
     元高校演劇顧問が書いた、高校演劇の実践戯曲創作マニュアル。文章はわかり易く、しかも短いのですぐ読める。ちょっと「昔ながら」という雰囲気はするが、オーソドックスな著者の主張は十分創作の参考になる。
     
  • 「話し言葉の日本語」井上ひさし・平田オリザ共著(小学館)1500円
    演劇をするときに避けられないのが日本語と向き合うこと。日本語の歴史から、劇の構造、テーマ、セリフにいたるまでが二人の劇作家によって語られていく。「セリフの時代」という雑誌に連載されたものをまとめたもの。

    以上は2005年に記録したものです。